第37章 その先にある未来
~ 山口side ~
嶋田さんのお店から、城戸さんと肩を並べて歩く道は何となく緊張して時々右手右足が同時に出ちゃいそうになりながらも帰り道をゆっくりと歩く。
さっき、嶋田さんにサーブを教えて貰うお願いをして帰る時、外に出たら城戸さんがいて。
いま考えてみれば、あの時・・・城戸さんはいつからあそこにいたんだろう。
もしかして、話聞こえちゃったかなぁ?
もしそうだとしたら、オレ・・・ヤバいかもだよな。
バレー部の誰かに教わるとかじゃなくて、外部の、しかもコーチの知り合いの人に練習見てもらうお願いするとか。
変なヤツとか思われてたら、どうしよう。
そう思うと、何か話さなきゃって思っても何を話せばいいのが分からなくて隣を歩く城戸さんの事をチラリと見ては、また前を向いてしまう事を繰り返す。
これがツッキーだったら、部活のこと以外にもクラスの事とか、明日も一緒に学校行こうよ!とか、なんかそんな感じの事を話しながら帰るのに。
城戸さんとはクラスも違うし、共通の話題って言ったらバレー部の事くらいしか浮かばないし。
でもそうなると・・・さっきの事を聞かれてたらって、考えちゃうよ。
けど、せっかく並んで歩いてるのに無言のままっていうのも・・・
城戸さんはいつも影山と帰ってるよね?
影山とは、どんな話をしながら歩いてるんだろ。
確か、家も近いとか言ってたし中学だって同じだし。
学校のこと以外にも、オレより共通点・・・あるし。
何か、話さなきゃ。
そんな事ばかりが頭の中をグルグル回って、やっぱり右足右足が同時に出てしまいそうになって・・・
「ぅ、わっ!・・・セーフ」
ザザッと音をさせながら転びそうになるのを踏みとどまって、息を吐く。
『び、っくりした・・・山口君、大丈夫?』
「だ、大丈夫・・・オレもびっくりしたけど」
乾いた笑いを浮かべながら体勢を戻し鞄を背負い直すして、また歩き出す。
そろそろホントに何か話すことはないかと思いながらまた城戸さんを見れば、城戸さんもちょうどこっちを見たのが同時で、思わず。
「あ、あのさ城戸さん!さっきの、だけど・・・」
口から出た言葉は、そんな言葉で。
『さっきのって?』
「あ、いや、だから・・・えっと・・・もしかして聞こえちゃってた、かな?って」
そこまで言えば、城戸さんも察してくれる。