第37章 その先にある未来
繋心が輪の中心となって、対戦していく相手校の事を話してくれる。
その中でも、最初の壁になりそうだと繋心が話したのは鉄壁と呼ばれる伊達工業高校だった。
繋「確か前に対戦した事があるみたいだが、その時とはこっちも状況は変わってる。鉄壁と呼ばれる高いブロックを崩す事が出来れば流れは自然と変わるだろう」
そう話す繋心の言葉に、東峰先輩の顔色が僅かに変わる。
前にも対戦してる?
その時と今は違う?
高いブロックを崩せば?
ひとつひとつのピースを組み立てていくうちに、ひとつのシーンに繋がった。
もしかして、東峰先輩が前に言ってたのってこれなんじゃ?!
何度スパイクを打っても、意味がなかった。
自分にトスが上がっても、得点には繋がらなかった。
部に戻る前に聞いた話は、そういった内容で、スパイクが決まらないから、自分のせいで負けたんだ・・・とも。
勝ちたくても勝てない。
そんな悔しさは立場が違えど私も気持ちは分かる。
あの日。
最後の試合でどんなに頑張っても、セッター潰しにあってトスを上げることが出来なくて、負けた。
あの時の自分が、東峰先輩の過去とうっすら重なって行く。
けど、繋心の言うように今はその時とは違う。
私と違って東峰先輩は、もがいて苦しんで1度はバレーから離れても、ちゃんと自分の意思でコートに戻って来た。
同じように苦しんでいた菅原先輩も、壁に阻まれて落ちてくるボールをひたすら拾い上げていた西谷先輩も。
気持ちに整理がついて、ここにいる。
繋心がどういうメンバー構成を考えているのかは分からないけど、同じコートの中に影山や月島君がいるのなら、烏野側だって高いブロック力が備わっているとも言えるし。
それに烏野には、最強の囮でもある日向君だって。
合宿の時の音駒戦では1度も勝つ事は出来なかったけど、それでも青城との練習試合では東峰先輩や西谷先輩がいないベストメンバーではないにしても勝てたんだもん。
あの頃に比べたら烏野は随分と変わったんだから、あとは大会当日に全員がどれだけベストな状態で挑めるか、それが大事な事になってくる。
そうなると、部員全員の体調管理とか、気持ちのケアとか・・・そういった事もマネージャーにも責任重大だよね。
自分で書いた赤いペンの文字を見つめながら、今後の自分の課題を、また、書き綴っていた。