第37章 その先にある未来
だからオレは···負けるわけには行かない。
それが例え、どこであろうとも。
···誰がいても。
入「もしも烏野と当たる事があったとしたら、その時はこっちはベストメンバーだ。前にやった時の、及川がいない時とは違う。だからと言って油断は出来ないがな」
「油断なんてしませんよ監督。どこのどんなチームが来ても、オレは全力で戦うだけです」
岩「そこは全員でって言えや!」
岩ちゃんの怒号と同時に、目の前が一瞬チカチカとする。
「痛いよ岩ちゃん!なんの前触れもなくゲンコツするのヤメテ!」
岩「ほぅ···じゃあ予告すればいいんだな?」
「いえ···予告もなにも、ゲンコツをやめてください···」
仰け反るようにして岩ちゃんから離れながら言えば、フンッ!と鼻を鳴らして岩ちゃんが監督達に向き直る。
岩ちゃん···もし、もしも烏野と試合することになったら。
その時、岩ちゃんは冷静にプレイ出来る?
烏野には眼鏡美人のマネがいるから、恐らく···紡ちゃんはベンチには降りてこない。
けど、さ?
応援席にはいるんだよ?
岩ちゃんの見えるところで。
岩ちゃんが見えるところで。
オレたちに勝てるように···烏野を応援する紡ちゃんがいる。
紡ちゃんは、岩ちゃんじゃなくて。
もちろん···悲しいけどオレでもなくて。
飛雄や、あのキャプテン君たちを懸命に応援するのに。
それでも···絶対に勝てるって、言える?
いろんな思いを交錯させながら、じっと岩ちゃんを見た。
入「話はそれだけだ。全員、本番までにケガなんぞしてくれるなよ?」
溝「じゃあ、練習開始!まずはそれぞれのポジション毎に分かれて練習。その後に紅白戦するぞ!」
「「 ッス!! 」」
やたら気合いの入った溝口君をちょっぴり笑いながら、オレは矢巾に声をかけながらスパイカー陣の輪の中へと入って行った。
岩「おい。練習だからってぬるいトス上げんじゃねぇぞ」
「分かってるよ···そんなの」
いつもの様に貼り付けた笑顔を見せながら言えば、岩ちゃんはまた、フンッと鼻を鳴らしてコートに入った。