第37章 その先にある未来
~ 及川side ~
溝「練習の前に監督から話がある」
そう言った溝口君の後ろから、監督が顔を出した。
入「溝口君、まずは例のものをみんなに」
溝口君からみんなに配られた、1枚の紙に目を落とす。
そこにはこれから始まる県予選のトーナメント表が印刷されていて。
「へぇ、白鳥沢は向こうの山か···天変地異が起きない限り、向こう側の決勝に上がるのはウシワカって感じ?」
軽い口調で言いながらも、これまで何度も決勝で当たっては溢れんばかりの煮え湯を飲まされてきた事を思い出す。
花「オレ達も順調に勝ち進めていけたら、今度こそは···だな」
「そう、だね。もちろんそうなるようにオレが司令塔に立つつもりではいるよ」
フフン、と笑いながら花と話して入れば、それを見て監督が咳払いをする。
入「順調に行けたら、勝ち進むことが出来ればなんて言う、言わばタラレバの話だけで済まない事もある」
溝「及川。ちゃんとトーナメント表を最初から最後まで辿って見てみろ」
言われるままにトーナメント表を見直して、これのどこに問題が?なんて思いながら溝口君の顔を見る。
溝「気付かないのか?順調に勝ち進んで行けば、最後に当たる高校がどこになるのか」
最後って、準決の事?
もう一度トーナメント表を見て、ひとつひとつの学校名を確認して行く。
「···あっ」
岩「烏野···」
「もーっ!オレがいま言おうとしたのに!」
岩「知るか!」
烏野···か。
まさか、ここまで上がっては来な···いや、それも分からないか。
向こうには飛雄がいて。
あのチビちゃんがいて。
それから···紡ちゃんがいる。
紡ちゃん自体はコートに降りることはないけど、でも紡ちゃんがいることであのチームの士気が上がるのは厄介だ。
特に···あのキャプテン君と。
それから、飛雄。
あぁ、そうだ。
あのチビちゃんも、紡ちゃんには妙に懐いてたっけ?
いずれにしても、オレ達が負ける事はないだろ?
前にやった練習試合は、ベストメンバーではない。
だからといって、次に対戦した時に余裕で勝てるとは言いきれないにしても、勝ち進んでウシワカと戦うのはオレ達···青葉城西だ。
次こそは、今日こそは!
そう自分に言い聞かせながらも、まだ1度も倒せていない相手。
それが···白鳥沢の牛島若利だ。