第36章 目指すべき場所へ
あの日を境にして、私の生活環境が特に変わることもなく、穏やかな日々が過ぎていった。
自分の中でハッキリとケジメをつけた、あの日。
後悔はしてない。
落ち込んでもない。
そもそもずっと前に、終わりは告げられていたんだし。
あとは···堂々と胸を張って走り続けるだけ。
影「おい、早く体育館行くぞ」
ドサッと私の机にカバンを置いて、影山が早くしろと急かす。
『分かってるって。ほんっと影山って、三度の飯より練習が好きっていうか?』
影「うっせぇ···飯は飯だ」
ピクリと片眉を動かす影山を笑いながら、それじゃ行きますか?と自分のリュックを背負った。
影「お前さ···なんかあったか?」
『なんかって?』
歩きながらチラリと私を見て、影山がまた前を向く。
影「最近のお前、やたら張り切ってるなって」
『大事な大会があるんだから、そりゃ張り切るに決まってるじゃん?』
影「そうじゃなくて···なんか、こう···余計なことを考えないように練習しまくってる、みたいな」
ピタリと足を止める影山に、私も隣で立ち止まる。
『影山は、今度の大会···勝ち抜けたい?』
影「は?そんなん当たり前だろ···俺達は全部勝って、それで、」
『カラーコートに立つ!でしょ?』
影「お、おぅ」
『その為には、マネージャーとして余計な事は考えなくていいようにケジメをつけた。それだけの事』
ただ、それだけだよ。
そう言った私と影山の間に、心地よく風が吹き抜ける。
『さてと、練習練習!王様、体育館まで競走ね!よーいドン!』
ポカンとした顔の影山を置き去りにして先に走り出す。
影「あっ、てめぇ!汚ぇぞ!!···待てコラ!!」
『汚いってなによ!それに待てと言われて待つバカはいませーん!』
振り向きもせずに階段を駆け下り、廊下を走り抜け···昇降口へと続く角を曲がると···
目の前に立ちはだかる、高い、高い···壁···とか言ってる場合じゃない!!
『ちょっ、そこ通して!!』
山「えっ?!あ、城戸さん?!」
月「はぁ···なんなの?」
振り返る山口君と月島君を避けることも出来ず、足を止めてしまう。
影「城戸てめぇ!捕まえたぞコラァ!」
『痛たたた!頭掴むのやめてって前から言ってるよね!!』
影山のデッカイ手で掴まれるとホントに痛いんだから!