第36章 目指すべき場所へ
紡ちゃんが旭の腕をガッチリ掴んで引っ張っていく。
『大地さーん!東峰先輩も特訓するそうでーす!』
旭「い、言ってないって!」
『勝つ為に特訓するのに···なにか問題でも?』
旭「···頑張ります」
『よろしい!』
キャッキャと笑いながら旭を連れて行く紡ちゃんは、最近少し···変わった気がする。
ちょっと前までは、どことなく旭には遠慮がちっていうか、そんな感じがしたけど。
旭だけじゃなくて、他のメンバーにもだけど。
まるで清水や西谷がもう1人いるみたいなっていうか···
澤「なにをニヤついてんだ?」
「え、オレいまニヤついてた?!」
思わず顔を叩いて言えば、大地こそニヤついてんじゃん!
「大地。なんか最近の紡ちゃんって変わったと思わない?前よりずっと···最強度が増したっていうか、清水とか西谷みたいっていうか」
思ってた事を大地に言えば、大地も紡ちゃんを見て···そうだな、と笑う。
「あれ、その感じってもしかして?大地はなにか知ってる感じ?」
澤「まぁ、主将だし?って言うのも変だけど、紡から聞いたんだよ」
「紡ちゃんからなにを聞いたの?」
大「アイツと···青城の岩泉と、キッパリ決別して来たんだって、ね」
「へぇ···そうなん···え?!」
それって、気持ちの踏ん切りを付けてきたってこと?!
澤「それから、啖呵切って来たとも言ってたな。大会では···負けない、とか···俺達ものんびりしてられないな?···チームの為にも、その気持ちの為にもさ」
「そうだね···」
あれだけ泣いて、あれだけ悩んだ気持ちを···やっと整理つけたのは、それだけ紡ちゃん自身が前を向く努力をしてたって事だよね。
「うん、決めた!大地、オレ達もあの中に入らない?」
澤「···だな。ヒゲちょこも鍛え直さなきゃだし、なにより勝つ為に!だろ?」
そうそう!と笑って、ボールが弾むコートに顔を向ける。
「おーい、紡ちゃーん!オレも大地も参加希望者!よろしく!」
大きく声をかければ、紡ちゃんが了解と両手を上げる。
それを見てオレ達は頷きあって、その1歩を踏み出した。