第36章 目指すべき場所へ
さっきの大地の言葉があるからなんだって思える。
烏野に入って、オレ達3人はいろいろありながらもずっと一緒に部活を続けてきた。
先輩達の最後の勇姿も、3人で見送って来た。
どの代の先輩達も、ちゃんとしてて。
飛べないカラスとか呼ばれてても、それでも精一杯···羽ばたこうとしてた。
···例え、遠くに飛べなかったとしても。
でも今オレ達は、少しでも長く遠くまで飛ぶためにここにいる。
コーチも、顧問も。
それから···
「紡ちゃん、オレも仲間に入れてよ。ボール拾いでもなんでもするからさ」
『スガさんにボール拾いなんてさせられないですよ。私がそれをやるから、日向君の指導の方をお願いします』
はい、とオレにボールを渡す紡ちゃんにそれを返して、特別練習のコーチは紡ちゃんと西谷だろ?と笑う。
「いーのいーの!なんかさ、あの時を思い出すよなぁ···ほら、内緒の早朝練習!」
『あっ···確かに!』
西「早朝練習?」
向かい合って笑うオレ達を見て、西谷が首を傾げる。
「そう。あの時の秘密特訓がなかったら、今頃は日向も影山も···ここにはいなかったかも知れないんだ。でも今、ちゃんといる。相変わらずレシーブは下手っぴだけどね」
ほんの少し前の出来事が、懐かしく感じるのは···それだけ今日までの日々が色濃く過ごせて来たからだろうか。
西「下手っぴレシーブは俺が許しません!紡、アイツらをシゴキにシゴキまくってレシーブ上達させんぞ!!」
『おーっ!』
日「ノヤっさん!ローリングサンダー教えてぇ!!」
西「うっさい!普通のレシーブが上手くなったら···考えてやる!」
「アハハ···厳しいなぁ、西谷は」
入学式の後からバタバタとした部内にはいなかった西谷も戻って。
旭「西谷はスパルタだからなぁ···日向、頑張れよ?」
西「なに言ってんスか旭さん!旭さんだってサボってた分これからビシバシ頑張って貰わないとです!もう···俺が繋いだボールをスパイクしないだとか言わせません!」
旭「あー···が、頑張るよ···」
旭も···戻って。
やっと、ここからがスタートだと思えるカタチが出来て。
全員が、同じ方向を向いて走り出せる日が来たんだ。
『東峰先輩もレシーブ特訓します?っていうか···しますよね?』
旭「えっ、オレも?!え?えぇっ?!」