第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
公園の中を、ゆっくりと歩く。
夕方をとうに過ぎた時間でもあるせいか、そこに明るい時間の賑やかさはなく、先を見れば犬の散歩をしている人やジョギングをしている人···そんな人たちが少なくはなかった。
岩「紡。お前、よく来るのか?」
『どうしてですか?』
岩「いや、ここは···」
ハジメ先輩の言いたいことは、ちゃんと分かる。
ここは私たちが、最後にした場所だから。
きっとハジメ先輩は、それを言いたいんだろうって。
『大丈夫ですよ?あれから私、何度か来てるし』
岩「···そうか」
『もちろん、最初のうちは避けて通るくらいでしたけど、少し経ってからいろいろあって、国見ちゃんとか、あとは烏野の東峰先輩とか』
まぁ、東峰先輩の時は私がちょっと強引に連れてきた感じではあるけど。
岩「国見と?」
『はい。国見ちゃんと来たのは中学の時クラスが同じで、出席番号も前後で。それで進路面談が私の次が国見ちゃんだったのもあって···一緒に帰りながらいろいろな話をして···』
岩「国見がお前と進路の話をするとか、想像つかねぇな。国見は中学の時からやる気があるのかねぇのか分かんねぇ感じだったしよ。で、どんな話をしたんだ?」
『国見ちゃんには、先生との話が聞こえてたみたいで···なんで烏野なんだ、青城には行かないのか?って結構な勢いで問い詰められました』
それだけ言うとハジメ先輩は、急に黙り込んで遠くを見ていた。
あの頃の私は、青城を避けるように進学先を探してて。
バレーボールはキッチリと辞めるつもりで、部活なんて関係ない、だったら歩いて通えるような学校を探そう。
そうやって自分から逃げてたから。
だから家族にも相談しないで、勝手に進路希望用紙に記入して提出したりして。
後にそれが家族会議になるほどの事にもなった。
岩「青城に進まなかったのは、俺のせいもあるよな···」
足を止め、私をじっと見ながらハジメ先輩が呟く。
『確かにそれも、理由のひとつではありました。ハジメ先輩の覚悟をムダにしたくない、だったら自分が別の場所に···とか、変にカッコつけちゃって。でも結局は烏野に行ってもバレーに関わってるんだから、変ですよね』
おどけるように肩を竦ませて見せれば、でもその結果として、違う立場でのお互いを見ることになったんだって、ハジメ先輩が返した。
