第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
~ 岩泉side ~
ん?
あのちぐはぐな後ろ姿の2人···紡と矢巾じゃねぇか?
通りを歩きながら、少し先を歩く後ろ姿を見て確信する。
ひとつは毎日のように見ているウチの制服。
もうひとつは、まるでリュックが歩いてるのか?と思うような小柄なやつ。
どう見てもあれは、紡だろ。
声···掛けてみるか?
でも、今日は1度···声掛けちまってるしな。
どうすっか···なぁ?
これが及川なら、駆け寄ってでも声かけるんだろうが。
コンビニの袋をブラブラさせながら、2つ並んだ人影の後をついて行く。
いや待て。
これじゃ、俺が変なヤツだろうが。
それならいっそ、声かけちまった方が自然な流れだよな?
乾いた笑いを漏らしながら、歩く速度を上げていく。
すぐに追いついた紡の肩をポンっと叩けば、紡は肩を跳ね上げて俺を振り返った。
『ハジメ先輩?!』
「お前らいま帰りか?随分とのんびりメシ食ってたんだな」
軽く腕を組みながら言えば、紡は普通に食べてましたけど?と紡らしい返事を寄越す。
矢「のんびりというか···まぁ、いろいろありまして。それより岩泉さんは出掛けてたんですか?」
「俺か?俺はこれの帰りだよ」
手にぶら下げていたビニール袋を掲げて見せれば、それこそ紡はこんな時間におやつを買いに行くとか···ウエイト増えますよ?と笑う。
「うるせぇな、紡。俺だってたまには間食くらいするっつうの。それに普段からトレーニングしてっからウエイト増加の問題もねぇよ。な、矢巾?」
敢えて矢巾に振れば、矢巾も確かに及川さんの練習メニューは···キツイっす···と漏らした。
「で、矢巾?お前は電車通学だったよな?駅は反対方向だぞ」
矢「それくらい分かってますよ。オレはつーちゃんを家まで送り届けたら帰るつもりです」
だろうな。
けど、コイツを送るなら俺が帰り道を少し回れば出来なくもねぇ。
「矢巾、紡は俺がここから送って行くから、お前は引き返してそのまま帰っていいぞ」
『え?!』
矢「あの、でも···」
「いいって。俺が帰る方向はさほどコイツ家と変わらねぇし、それならお前も早く帰れんだろうよ。明日は朝練あるし、そうしとけ」
『矢巾さん、明日朝練あるんですか?それなら早く帰って早く寝た方がいいですよ!』