第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
月「じゃあ、なんで?」
月島君が矢巾さんの方へチラリと視線を投げてから、私を見る。
『なんでって、約束してたからだけど?』
月「それって、デート?」
『学校帰りに待ち合わせて映画見てご飯食べるだけだよ?』
山「それって、デートって言うんじゃ···?」
遠慮がちに会話に加わる山口君に、デートだったら休みの時なんじゃない?と返せば、複雑な顔をされる。
月「ふたりっきりのデートじゃないんだったら、いいよね?」
『なにが?』
月「なにが?って、この後···僕達が合流してもってことだよ」
···はぃ?
なんで月島君達が矢巾さんと一緒にご飯食べたいんだろう??
もしかして、青城のバレー部の練習内容とかを知りたい···とか?
でもそれだったら、及川先輩に聞けば早いのに。
って、そう簡単に教えて貰えるとは思えないけど。
『私は別にいいけど、でもそれなら矢巾さんに了承を得ないとダメだから』
私は同じ学校で、部活も同じだから平気だけど。
矢巾さんは学校も学年も違うし。
月「山口···早く」
山「え、オレが?!」
月「···早く」
月島君に言われて、山口君が矢巾さんの所へ行って何かを話す。
矢巾さんは驚きの顔をしていたものの、一生懸命に話をする山口君と、それから時々私の方をチラチラと見ながら···小さく頷いていた。
『月島君って、思ってたより社交的なところがあるんだね』
学校とか部内では、いつも素っ気ない態度の事が多いから、珍しいこともあるんだなぁ···なんて思って言えば。
月「は?ポチ、バカなの?」
返ってくる言葉は、普段と変わらない月島君の言葉で。
『だって月島君が自分から他校の人がいる所に加わってご飯食べたいって言うと思わなかったし』
月「別にご飯が食べたいワケじゃない。いつも腹へりな日向や王様と一緒にするの、やめてくれない?」
じゃあ、どうして?と言おうとした所に、矢巾さんと山口君が戻って来て、それも聞けないまま4人でショップを後にした。
なんとなく、落ち着かない様子の矢巾さんの隣を歩きながら、ご飯はどこで食べますか?なんて言いながら。
その間も月島君は、微妙に不機嫌な顔をしたまま黙って歩いていた。