第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
う~ん···どうしてショップ店員さんっていうのはカワイイぬいぐるみを高い高い場所へと展示するんだろうか。
矢巾さんといつもの雑貨屋さんに立ち寄ったのはいいけど、お目当ての物があんな場所にあるとは···背伸びをしても、どうにかなるとは思えない。
ここはやっぱり、矢巾さんにお願いして取ってもらうしか···
そう思って振り返ってみれば、その矢巾さんはステーショナリーコーナーでショップ店員と何かを話し込んでいて頼めそうもなく。
別の店員さんにお願いして取ってもらうかな?と思いかけた、その時。
「はい、これで良かった?」
『あ、すみません、ありがとうございま···山口君···と月島君?!』
ヒョイっとぬいぐるみを取ってくれた人を見れば、そこに立っているのは山口君と月島君で。
山「さっきからずっと見上げてたからさ?ね、このぬいぐるみであってた?パンダさんがうさぎの被り物してるとか、かわいいよね!」
月「パンダなのかうさぎなのか?ってトコだけど···ポチ、こんなのが欲しかったの?···理解不能」
『いいの!理解してくれなくてもカワイイものはカワイイんだから···山口君、取ってくれてありがとう。背伸びしても多分ムリだなぁって思ってて、助かっちゃった』
山口君からお目当てのぬいぐるみを受け取りお礼を言えば、月島君が小さく息を吐く。
『えっと、なにか言いたそうだよね月島君?』
月「別に?ただ僕は、多分届かないってより、確実にムリなんじゃない?って思っただけだけど?」
うぅ···言い返せない自分が悲しい···
月「それより、それ···買うの?」
抱きかかえてるものに視線を落としてから、月島君が私を見る。
『うん。実際に手に取ってみたらモフモフ具合いが好きな感じだし、買っちゃおうかな?って。でも、まだ寄るところがあるし···そこが迷っちゃうけど、買う』
山「寄るところって?」
『あ、私これから矢巾さんとご飯食べに行くから手荷物になっちゃうかな?とか』
ステーショナリーコーナーを振り返りながら言えば、そこに矢巾さんの姿はなく???
あれ?と思えばレジへの通路を店員さんと歩いている。
月「あぁ···カレシ?」
山「かっ、彼氏?!」
『えっ?!···違うけど?!』
ビックリするような事を聞いてくる月島君に、思わず声が大きくなる。
