第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
~ 月島side ~
山「ツッキー!あれ見てよ!」
「山口、うるさい」
山「ごめんツッキー!でも見て!あれ城戸さんじゃない?!」
ポチ?
ギャーギャーと喚き立てる山口が指差す方を見れば、それは確かにポチで。
あれは···青城の制服?
なんで、ポチが青城のヤツなんかと歩いてるんだ?
山「絶対そうだよね?!城戸さんだよね?!···なんで他の学校の男と仲良さげに歩いてんだろ···あれって青城の制服だよね?!」
僕の思ってることを全て言葉に変換する山口に、心でも読まれたのかと眉を寄せる。
山「デートかなぁ···」
「さぁ?どうだか」
山口の言うように、それがデートだと言われればそうも見える。
けど、ポチは特定の人に優しいっていうよりも、全員に同じように優しくする感じだから。
ごく稀に、そうじゃないところを見かけたりはするけどね。
それがたまに、イラッとする所でもある。
特にこの、山口とか影山とか。
山口は天然だし、影山は家も近いし中学からの仲だとは言っても、ね。
まぁ、いいか。
特定の人間にっていう言葉があてはまるかは分からないけど、僕だってスクイズの味···違うし。
山「ね、ツッキー。声掛けたりしたら城戸さんびっくりしちゃうかな?」
「···は?」
山「だってせっかく見かけたし、どんな関係なのか気になるし!···でも、彼氏だよとか言われたらどうしよう」
行動力があるのかないのか分からない山口の提案に、それはそれで声をかけたらポチがどんな反応をするのか···そこには興味はある。
「彼氏って事はないと思うけどね。よく見てみなよ、あの男。あれは青城バレー部のセッターだよ。僕達が練習試合した時の、だけど」
最後の最後にあの有名人が現れるまで、コートの中にいたヤツだ。
「行くよ、山口。モタモタするなら置いてくから」
山「あっ!ま、待ってよツッキー!」
早足で進み出せば、慌てて着いてくる山口の足音が聞こえてくる。
さぁ、なんて声をかけようか?
驚く顔をするポチを想像して、口元が緩みそうになる。
横断歩道の信号が点滅するのを見て、山口を振り返りながら僕は一層、足を早めた。