第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
『行きましょうか、矢巾さん』
矢「え?···でも、いいのかなぁ」
チラリと先輩達を見て、矢巾さんが様子を伺う。
『ハジメ先輩が大丈夫って言ってるから、大丈夫だと思いますよ?それに今日は矢巾さんと約束したんですから』
2人揃ってハジメ先輩達を振り返れば、ニコニコ顔でわきゃわきゃと手を振る松川さんがいた。
『ね、平気でしょ?』
矢「明日辺り、オレは尋問されそうだけどね···ハハッ」
引き攣り笑顔を見せる矢巾さんの背中をグイッと押して、とりあえずここは離れましょ?と映画館を出た。
でも、どうしてあの場に···あの錚々たるメンバーがいたんだろ?
みんな、あの映画に出てくる女優さんが好きなのかな??
···及川先輩なら、分かる気もするけど。
確かあの女優さんて、私達よりほんの少しだけ年上だった気もするけど。
及川先輩のストライクゾーンって、広いなぁ。
矢「夕飯を食べるには早い気もするけど、どうする?食べちゃう?それとも少しブラつく?」
スマホで時間を見ながら聞く矢巾さんに、せっかくだからブラつきましょうか?と提案して、前に行った雑貨屋へと足を向けた。
歩きながら矢巾さんとのおしゃべりを楽しみ、人通りが多い街中を進む。
通い慣れた雑貨屋までの道のりは、いろんなお店がズラリと並び、時には立ち止まって飾られている洋服を眺めては論議して笑った。
矢「さっきの服とか、つーちゃん似合うと思うけどなぁ?」
『そうですか?でも私ってこんな身長だし、あんな感じの服って敬遠しがちだから自分じゃよく分からないかも?』
矢「そうなの?じゃあ、たまにはチャレンジしてみるといいんじゃない?あ、普段はどんな系統の服が多いの?」
系統···って言われても、部活参加とかしてるとほぼほぼジャージか制服か···だけど。
練習ない時は、特に外出がなければちょっとそこまでの買い物くらいなら大丈夫的な服だし。
『カジュアル···が多いかなぁ?意外とびっくりするような、ラフさかも知れません。コンビニくらいならセーフ!みたいな?』
そう考えると、私ってもっとオシャレにチャレンジしないと女子力上がらないんじゃ?!と付け加えて笑う。
矢「オレも人のこと言えるような服装してないからなぁ。ホント、ジーパンにシャツ···とか?」
あ、それ一緒かも!と言って更に笑い、街中を進んだ。
