第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
岩「そのうちを待たずに、いま頭の形を変えてやってもいいんだぞ。それからそのおかしなポーズやめろ」
おどけて変なポーズを取りながら言う及川先輩に睨みを効かせて、ハジメ先輩がゲンコツを掲げる。
及「あ、ははっ···それは遠慮しとこうかな···」
岩「そんなに遠慮しなくてもいいぞ」
何度も見た来た光景に、またも小さく笑いながら···それを見守った。
松「お、そういや矢巾。お前まだつーちゃんと予定があんじゃねぇの?飯とか行くんだろ?」
矢「あ、はい、そうです···けど」
及「紡ちゃんとご飯?!···オレ達も混ざっていい?っていうか、いいよね?」
キラリと怪しげな微笑みを見せながら、及川先輩が矢巾さんに迫る。
矢「あ~···えっ、と···?」
きっと矢巾さんは、部の先輩であり、キャプテンでもある及川先輩にそんな風に言われたら、断れない。
『今日、矢巾さんとは前もっての約束をしてたんです。だから、及川先輩は仲間に入れてあげません』
及「えぇっ?!紡ちゃんのいじわる···」
『なんと言われても、それは譲れません。それに私、今日こうやって出掛けるの···実はちょっと楽しみにしてたんです。普段は部のメンバーに混ざってばかりだったから映画なんて興味なさげな人達ばかりだし、買い物だってスポーツ用品店のハシゴとかだし』
岩「なんかスゲー説得力あるな、紡の言い方」
だって、本当だもん。
影山と学校帰りに寄り道とか、ほとんどないし。
澤村先輩や菅原先輩と買い物っていえば、清水先輩に頼まれた部の消耗品の買い出しとかだし。
『だから、今日は矢巾さんと一緒に···この後も買い物したりご飯食べます。以上、城戸紡でした!』
捲し立てるように言って、片手を上げて宣誓ポーズを決める。
なんで、そんなことまでしちゃったのかは自分でも分からないけど。
でも、そこまでハッキリ私が言えば及川先輩だってムリに着いてくるとは···言わないだろうと思うし。
松「よーし、よく言ったつーちゃん!そんじゃ、男前のオレがアホ川を捕まえとくから矢巾と早く行っちゃって?」
岩「だな。クソ川は俺らに任せて···矢巾と楽しんでこいや」
及「アホとかクソとかやめてよ!」
岩「あ?なんか文句あっか?」
及「···アリマセン」
早く行けよとハジメ先輩が手をひらつかせる。
