第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
松「お、戻って来たか」
松川さんの言葉に顔を上げ、2人が歩いて行った通路の先を見る。
花「矢巾、生きて帰ってきたか」
及「オレの予想だと顔面ボッコボコだと思ったけど?」
松「そりゃ及川にだけの特別コースだろ」
私を囲むメンバーがそれぞれな事を言って笑い合う。
けど、正直···私はそれどころじゃなくて。
ちゃんと2人が戻って来るまで何も言わずに待っていた。
岩「悪ぃな、紡。矢巾のこと借りちまってよ」
『あ、いえ···それは別に。用事は終わったんですか?』
岩「あぁ、まぁな。矢巾借りちまったし、飲み物でも買ってやるよ」
『あ、それは大丈夫です。さっき松川さんがオレンジジュース買ってくれましたから』
矢巾先輩達が行った後すぐに、自分達が喉乾いたからって言って松川さんがお金を出して、及川先輩と花巻さんが買ってきてくれたんだよね。
岩「オレンジジュースってお前···子供かよ」
『違います。ちゃーんとした高校生です』
普段から至る所でお子様扱いされるのに慣れてしまって、つい、そんな返しをしてしまう。
岩「ちゃんとした高校生ってなんだよ。あ、ちゃんとしてない高校生の見本がそこにいる、か」
松「あー···、いるわ」
花「確かに···」
及「え?なに?なんでみんなしてオレ見てんのさ?」
···いた。
じゃなくて、さすがに私まで流されてそんな風に考えてしまうのは、及川先輩に失礼だよね。
岩「つうか、松。なんでオレンジジュースなんだ?イチゴジュースはなかったのか?」
松「いや、買ってきたのは及川と花巻だし。で、なんでイチゴジュース?」
岩「こいつは大のいちご好きなんだよ。紡はアレだ、イチゴと兄貴の作るミルクティーで出来てると言っても過言じゃねぇ」
『過言ですよ!!ちゃんとご飯も食べてますから!それに桜太にぃの作ってくれるミルクティーは美味しいからいいんですぅ!』
岩「ま、そういう事だ」
どういう事ですか!とまたツッコミを入れて、思わず吹き出した矢巾さんに釣られてみんなで笑い出す。
矢「す、すみません。でもなんか部活での岩泉さんとのギャップがありすぎて···」
笑いを堪えながら矢巾さんが言うも、涙目になってるのを見て私もまた笑った。
及「岩ちゃんはさ、部活の時は暴力ゴリラだからねぇ。及川さん、そのうち頭の形が変わっちゃうよ」
