第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
みんな酷いよねぇ?!って言いながら私の横にスルリと並ぶ及川先輩の気配に体が勝手にスッと距離を置いて、矢巾さんの後ろに隠れてしまう。
矢「···?つーちゃん?」
及「あ、紡ちゃんまで逃げるとか···ヒドイ!」
『そういう訳じゃ···ただ、何となく体が勝手にというか···』
松「本能的に、つーちゃんは及川が危険だって感知してるだな」
花「言えてる言えてる」
そんなやり取りを聞きながらも、ハジメ先輩はずっと眉間にシワを寄せて黙ったままで。
それもきっと、3年生の仲良し組でのお出掛けなのに、いつまでも私達がいるから···邪魔、なのかな?なんて思って···
『あの、矢巾さ、』
岩「矢巾。ちょっと、顔···貸せや」
矢「ぅ···はい···」
岩「紡。俺はちょっと矢巾と話がある。お前は及川菌がつかねぇように松川の隣にいろ。及川より安全だ···行くぞ矢巾」
ハジメ先輩が先に歩き出し、その後を矢巾先輩がそろりと着いて行く。
『松川さん···もしかして矢巾先輩、怒られたりするんでしょうか···?』
なんでもない用事なら、この場で話をすれば済むことなのに。
けど、敢えて矢巾さんだけを連れて行く事がどうしても心配になった。
松「そうだなぁ···ま、ちょ~っとシメられたり?」
『シメ···え?!どうしてですか?!』
花「ホンキにするからそういうのヤメロっての!」
『じゃ、いまのはウソ?』
松「ゴメンゴメン!お詫びにジュースでも買ってあげるからさ?」
···ジュースって。
そんなお子様じゃないけど、私。
及「岩ちゃんはさ?多分···岩ちゃんとオレと、それから紡ちゃんだけが知ってることを詮索するなって言いに言ったんじゃないかな?」
『それ、って···もしかして···』
及「そういう事。だから、心配しなくていいんじゃない?」
松「おい及川。お前コッチ寄るなって、及川菌が増殖したらどうすんだよ」
及「あのね!!」
わちゃわちゃとジャレ合い出すみんなを横目に、2人が歩いて行った方を見る。
そう言えばさっき、矢巾さんが話している時にハジメ先輩が話を止めた。
それなのにハジメ先輩は、矢巾さんに何を話そうとしているんだろう。
それが気になって、2人が戻るまでの間···ずっとその方向を見続けた。