第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
『どうしてそんな事を?』
矢「別に深い意味はないんだけどさ。ただ···岩泉さんって、硬派で、男らしくて、同じ男のオレから見てもカッコイイし···きっと彼女とかいたらスゲー大事にするんだろうなって思ってたから。なんで···別れたんだろうって、さ」
矢巾さんから同性から見てもカッコイイって聞いて、まるで自分が褒められているかのように嬉しくなってしまう。
だって···カッコイイし。
それは離れてしまった今でも、私も矢巾さんと同じように思うことではあるし。
ただ···
『大事には、してくれてましたよ?とっても···』
大事にしてくれて、その結果が···今だから。
自分がバレーに打ち込む為に、私に寂しい思いをさせたくないとか、きっとそういういろんな事を考えて、悩んで、迷って···最終的な決断をしたんだと、思えるから。
でも、もしあの日に戻れるなら。
そういった悩みや迷いを、一緒に解決したいって言えるのに。
だから側に···って、言えたのに。
けど、あの時のことがなかったら···いまのみんなとも繋がりが出来なかった訳で。
人との繋がりって、難しい。
矢「オレにはわかんないよ···大事にしてたら、理由がどんなであれ、」
「その辺でやめといたらどうだ、矢巾」
この···声···
ドクン···と大きく胸が鳴り、ゆっくりと声がした方へと顔を向ける。
矢「岩泉さん···」
その声の持ち主は、私が想像した通りの人間で。
『ハジメ先輩···と、みなさん···』
及「ちょっとちょっと紡ちゃん?!岩ちゃんと愉快な仲間たちみたいなのやめて!」
松「お前に関しちゃ間違ってねぇだろ。な、花巻」
花「そうそう。なんなら、岩泉と愉快な下僕の及川っつうのもアリアリ?」
及「ないからっ!!」
ぽかんとする私達の横で、賑やかな会話を弾ませるメンバーにハッとして姿勢を正す。
『あの、皆さんも映画を見に?』
言ってしまってから、なんて間抜けな事を聞いたんだろうと後悔する。
ここは映画館で、映画を見に来たんじゃなければ···いるはずもないのに。
松「ま、そゆこと。及川が、どーしても今話題の作品を見たいんだよ!とか?」
花「な?女の子と話すのに話題作くらい見とかなきゃ!とか?」
及「だーかーらー!なんでオレだけそういう扱い?!」