第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
~ 影山side ~
繋「おっ、帰って来たか」
休憩時間に外に出れば、ゾロゾロと人影が見えた。
武「戻りました。烏養君、お留守番ありがとうございました」
繋「お留守番って、おい!」
慧「はいはい、お利口さんの繋心君でしゅねぇ~」
ゲラゲラと笑いながら慧太さんが言って、周りも笑い出す。
けど。
「おい。お前その絆創膏はなんだ?」
『あ、まぁ···ちょっと、ね。頑張り過ぎた』
···またかよ。
「どうせチビ過ぎて手足が足りない分、突っ込んだんだろ」
ぶっきらぼうに言って、くるりと背を向けた。
武「城戸さんは凄く頑張ってました。試合中のあの姿を見て、僕は音駒との練習試合の時の西谷君と重ねちゃいましたから」
西「マジか!おい紡···師匠として特別にローリングサンダーを伝授してやる!」
田「お嬢はいつノヤっさんに弟子入りしたんだっつの!」
月「ハァ···うるさ」
「「 なんだと月島てめぇ! 」」
ガヤつくメンバーにイラッとしながら、スクイズに口をつける。
「で、どうだったんだよ」
『どうって?ちゃんとお仕事はしてきたけど?』
「そうじゃなくて、その、アレだ。向こうには及川さんとかいただろ」
素直に岩泉さんの名前が出せず、代わりに及川さんの名前を出した。
『あ~、及川先輩、ハジメ先輩に怒られたりとかしてた。なんかね、男バレの体育館使うことになったから練習休みになって、それで何人かお手伝いしに来てたよ?国見ちゃんも金太郎もいたし、あと矢巾さんとか!』
···錚々たるメンバーじゃねぇかよ。
『でも、途中で履き替えた懐かしシューズの紐が切れちゃって、それはちょっと悲しかったなぁ···』
シューズ?
それを聞いて、なぜだか穏やかでいられない自分がいる。
確かコイツが前に履いてたシューズは、岩泉さんに貰ったとかいう、赤い紐の···だよな。
『いきなりプツンって切れて···なんか自分とかさなっちゃって。終わりって、いつも突然だから···ビックリしちゃうよね』
中学の時に使ってたシューズケースを軽く撫でながら言う城戸が、いつもの城戸と違って寂しげで。
胸の奥がムズムズとするのを感じながら、その頭にポンっと手を置いた。