第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
慧「お前は、どうしたい?」
『私は···っていうか、質問に質問で返すの反則!』
慧「うるせぇなチビ。いいからどうしたいんだって超絶イケメンのオレが聞いてんだ」
···ヒゲのくせに。
慧「ヒゲ関係ねぇからな」
なんで分かったんだろう?!
道宮先輩との約束は、練習試合が終わるまでの助っ人。
でも、その練習試合の流れがこの合同練習だとしたら、私は参加すべきで···だけど···ここで技術的な指導を受けたところで、それは私にはもう···必要ない、とか···
桜「紡は見学でいいって道宮さんが言ってたよ」
苦笑を浮かべた桜太にぃがそう言って、マグボトルに口を付ける。
桜「澤村君がね、交渉してたよ?練習試合が終わったんだから、紡は自分達のだからもう良いだろ?返してくれないか?とか」
慧「さっき話してたのはそういう事だったのか」
桜「そう。それで彼らが俺に意見を求めてから、ちゃんと俺は説明しといたよ···紡はまだまだまだまだ、俺達のだからね?って」
『え?』
クスクス笑い出す桜太にぃに、思わず目が点になってしまう。
慧「うわぁ、出た出た···」
桜「だってそうだろ?紡の保護者は俺達で、そして他の誰のものでもないし?」
慧「論点ズレまくりだろっての」
確かに···ナイス慧太にぃ。
桜「話を戻すけど、必要であれば合同練習に参加させるけど?って言ったら、今回の事で無理させちゃったしって、道宮さんが」
『分かった。でも、黙って見てるだけなのは嫌だから、せめて何かしらの手伝いをしてくる!スパイカー陣の練習になら、トス上げくらい出来るしね』
桜「そうだね。じゃあ、ケガのないように行っておいで?」
大きく頷いて、コートの端にいるどこかの顧問の先生に駆け寄る。
···あれ?
もしかして私、桜太にぃに上手いこと乗せられた?
ふとそう思って振り返ると、私の視線に気が付いたのかニコニコと手を振ってくる。
···やられた。
まぁ、でも···いっか。
私も軽く手を振り返して、顧問の先生にお手伝いを申し出た。