第35章 閉じた思いと、叶わぬ想い
シューズを脱ぎ、切れた紐を摘んでいると嗚咽が漏れてくる。
ハジメ先輩から貰った赤いシューズ紐。
プツリと切れて離れ離れになってしまった事が、まるで自分達の事と照らし合わされてしまって···シューズを抱きしめ声を殺して、泣いた。
自分なりに吹っ切って、顔を上げて、前を向いて。
もう大丈夫だと、新しい一歩を進み出したはずなのに。
どうしてこんなに、胸が押し潰されそうになるんだろう。
「やーっぱり、べソかいてたか」
···誰?!
背後から掛けられる声に肩を跳ねさせながら、窓ガラスに映り込む誰かの姿を見てハッと振り返る。
『国見···ちゃん···』
国「絶対、泣きべソかいてると思ったんだよな」
『うるさいよ···別に泣いてなんかないし』
シャツの襟元をグイッと引き上げ、ゴシゴシと顔を拭き···何事もなかったかのように表情を作る。
国「遅いっての。それに、そんなにゴシゴシやったらブッサイクなのが更にブッサイクになるぞ?」
『ブサイクとか、失礼すぎる···っていうか、国見ちゃんはなんでここに来たの?ここは烏野チームの、』
国「だから、お前がべソかいてると思ったから様子見に来たんだっつーの。それ···岩泉さんから貰ったシューズ紐だろ?中学の時、お前オレに嬉しそうに話して来たし」
国見ちゃんが歩み寄り、私の隣に片膝をついてシューズの先を撫でる。
国「よく頑張ったなって、褒めてやればいいんじゃねぇのか?こんな風に切れちまうまで大事にしてたんだろ?」
国見ちゃんの言葉に、また···視界が滲む。
国「あ~もう、いちいち泣くなっての。誰かに見られたら、オレが泣かしたと思われんだろ」
『だって···こんな急に切れちゃうとか、なんだか···』
こぼれ落ちる涙を拭いもせず、言葉を詰まらせる。
国「どうせアレだろ?お前と岩泉さんみたいだ···とか考えてんだろ?お前の考えそうな事だしな」
『な、なんで···』
国「わかるってそんくらい。何年お前を見て来たと思ってんだよ。っと、これは余計なことだけどな。あのさ、紡。オレ、思うんだけど···」
『···なに?』
言いながら国見ちゃんが、切れてしまったシューズ紐の端と端を両手で摘む。