第34章 スイッチ・オン
チラリと見た大地の顔が怖過ぎて、思わず一歩さがって引きつり笑いを浮かべる。
大地は多分、自分で気付いてないからな。
ホントは紡ちゃんを···好きかも知れないって事を。
オレとしては···気付いて欲しくは、ないけど。
でも、もし大地がそれに気付いて···紡ちゃんに伝えたりとかしたら、その行く末はどうなるんだろうか。
もしも···大地を受け入れたりとかしたら、オレはその時、どういう顔をすればいいんだろう。
元彼だっていう岩泉を眺めながら、大地との違いを探してしまう自分がいる。
見た目も違う。
性格だって、きっと違う。
責任感が強いとか、そういうのは似てるかも知れないけど。
じゃあ、逆に···同じかも知れないって所はあるのか?
大地は何気に、紡ちゃんに甘えられてもダメなものはダメだとキッパリ線引きをしてる。
それは、ただ単に意地悪をしてる訳でもなくて、ちゃんと相手の事を思いやってのことなんだけど。
なら、岩泉はどうなんだ?
そう言えば、あの日。
岩泉が烏野まで来て大地を待っていた···あの日。
いったい2人で、どんな事を話したんだろう。
オレは気になって、夜に大地にLINEしたけど教えては貰えなくて。
それでも気になったから、翌朝···朝練で学校に向かいながら大地に直接聞いたけど、やっぱり教えてはくれなくて。
大地から聞けた言葉といえば。
ー アイツは。岩泉は、俺が知ってる誰よりも···男らしいヤツだ ー
···とか、そんな言葉だった。
その後の大地は、もう何を聞いても何も語らずな感じで。
その時の大地の顔が、妙に忘れられなかった。
もしかしてまだ···岩泉は紡ちゃんの事が、本当は好きなんじゃないか?って思える時もあった。
岩泉が紡ちゃんと話す時や、紡ちゃんが影山や日向や他の誰かと話したりジャレたりしてる時。
そんな時、岩泉は。
なんだか···どことなく、優しい目をしてた。
それって、つまり···かも知れないだろ?
心の奥底で、小さなモヤモヤを抱えてしまう。
澤「スガ、どうかしたのか?怖い顔して」
「ん···別になんでもないよ」
怪訝そうな顔でオレを見る大地にそう返して、オレはまた···紡ちゃんが駆け回るコートに目を落とした。