第34章 スイッチ・オン
~ 菅原side ~
紡ちゃんが···ツーアタックした?
若干際どい感じだったけど、今のって···そう、だよな?
目の前で初めて見た紡ちゃんの行動に、瞬きを忘れるほど凝視してしまう。
「大地···いまの、見た?」
観覧通路の柵に凭れるようにして立つ大地に言えば、大地はひと言だけ、あぁ···と漏らした。
澤「スガ···男子と女子のネットの高さの違い、分かるか?」
「ネットの高さ?って、えっと···オレ達はいつも、公式戦と同じ高さにしてるから2m43cmで。女子のネットは···」
澤「2m20cm、その差、23cmだ。それなりに身長のある道宮を初めとする他のメンバーでさえ、俺達のコートに入ったら違和感はある高さの違いだ」
確かにその差は、違和感ある程の違いだけど···
「だ、でもさ大地。今まで紡ちゃんって、そういうプレイの片鱗なんか見せなかったよな?いつの間に練習したんだろう」
紡ちゃんちの地下には、オレらも何度か行ったことがあるバレーボールコートがあるけど、さすがにツーアタックの練習なんてひとりっきりの個人練習は難しい。
澤「桜太さんや慧太さんの反応を見る限り、あの2人に教わった感じじゃないな。誰かのを見様見真似しながらのイメトレとか、あとはポジションがセッターの誰かに聞いたとか···影山は天才的だとは言われていても、誰かに言葉で教える器用さはないし。スガも聞かれてないとなると···」
「まさか、及川···とか」
澤「それもないだろう。けど、多分···青城の人間には違いないだろうな。ほら、あそこにいる···練習試合した時のセッターとか」
あぁ···あの時の、って、えぇっ?!
「ちょ、待って?!だって紡ちゃんがオレや影山に聞かずにあのチャラい感じのヤツに聞くとかなくね?!」
澤「可能性はゼロじゃないだろ?なんかほら、お揃いっぽいぬいぐるみのキーホルダーとか持ってるらしいし?···意外なところで仲良しになったんじゃないのか?···紡、懐っこいし」
懐っこいって言っても、懐かれないよりいいじゃん?
澤「何かと愛されキャラだし。縁下とか、山口とか油断ならないし、あの月島でさえも。旭だって、慧太さんと間違われて抱きつかれてたりもしたな···」
···ん?
「大地、それってヤキモチ···?あ、いや···アハハ···」