第34章 スイッチ・オン
サーブで連続ポイントなんて、滅多にない。
でも、その滅多にない事でこっちの点数が追い付きそうな所まで近付いた。
···けど。
さすがに1人で拾い続けるのには限界がある。
もっと動き回れたら。
もっと素早く反応出来たら。
もっと···身長があったら。
今よりずっとボールまでの距離が遠くないはずなのに。
身長···?
そう言えば前に西谷先輩が···
西 ー 紡、お前どうしてそんなに身長が欲しいんだ? ー
『欲しいですよ!そしたら影山にお子様って言われないし、プレーだってもっと···』
西 ー お前、スパイカーになりたいのか? ー
『そういう訳じゃないですけど···』
西 ー じゃあ、身長関係なくね?お前は俺よりちっこいけど、紅白戦の時にあんだけスゲー事してんじゃん。俺は今の一生懸命なお前、好きだけど? ー
一生懸命···か。
私はいま、どれくらい頑張れてるんだろう。
こめかみを流れてくる汗を、肩口で拭いながら周りを見る。
1周目をずっとコートに入りっ放しだった先輩達が、誰ひとり弱音も吐かずに···ただ、ボールを追う。
どんなに打ち込まれたボールでも、私が拾って、それがセッターに繋がっている限りは誰も諦めてなんてない。
西 ー リベロがレシーブを諦めたら、試合は終わったも同然だ。だから俺は諦めない。俺が諦めなければ、コートの中のメンバーがスパイカーにボールを繋いでくれる。リベロは点を取れないけど、チームが点を取るためには···自分が誰よりも諦めの悪いヤツになることだと思ってるから ー
はい···西谷先輩。
練習時間外は清水先輩の事を追いかけ回してはいるけど。
ひとたび練習が始まれば、グングンと輝きを放つ西谷先輩。
いまは、その輝く力を···私にも少しだけ分けてください。
練習試合だけれど、負けたくはないから。
どこの誰が、烏野女子チームは1個も勝てないって言ってても、みんなが勝つつもりでコートにいるんだから。
···勝ちたい。
真っ直ぐ前を見据えれば、道宮先輩がスパイクを打つ為に床を蹴る。
だけど···ネットの向こう側ではブロックがピッタリ張り付いていて。
このままじゃ···ブロックに落とされる!
咄嗟にそう考えて、ネット際まで突っ込む。
絶対拾う!
絶対···落とさない!