第34章 スイッチ・オン
~ 及川side ~
へぇ···紡ちゃん、なかなかいいトコに目を付けたじゃん?
白帯にワントラップ仕掛けて落とせば、いまの青城チームなら拾えなくても当然と言えば当然だよ。
最初にピンサーでコート入った時は、あそこまで正確に狙ってなかったからね。
確かに白帯には当ててたけど、もう少し大きな流れでボールが落ちたし。
警戒させておいて手前に落とすなんて···策士だね、紡ちゃんは。
それとも···そうさせているあのお兄さんがやらせてるのかな?
爽やかでイケメンで、黙ってたって周りの女の子が放っておかないような···お兄様方。
まぁ、それもオレの次くらいのイケメンだけど?
なんてね。
ー ピッ! ー
おっと、紡ちゃんのサーブだけで連続ポイントか。
うちの女バレも、そんなにミスを連発するような感じじゃないはずなんだけど。
また、紡ちゃんがサーブを打つ。
「ナイスレシーブ!!」
やっと拾ったか···でも、紡ちゃんはセッターとして入ってるだろう、か···ら?!
前に来ない?!
なんでだ?!
試合前の練習見たけど、どう考えても烏野女子チームのセッターより、紡ちゃんがトス上げた方が断然···
青城側のトスが上がり、スパイクを打つ。
そのボールの先には、誰より早くボールの軌道を読んだ紡ちゃんが動いていて···
『正面ゲット!!···先輩!』
言葉通りスパイクを正面で受けて、尚且つボールの勢いまで潰してセッターに繋ぐ。
他のメンバーより、ひと回りも、ふた回りも小柄な紡ちゃんの武器は。
···俊敏さと移動スピード、だったよね。
オレが初めて中学の部活でプレーする姿を見た時は、まだセッターじゃなくて、リベロ。
あちこちアザだらけで、時には体育館を半分に仕切るネットに飛び込みながらもボールを拾ってた。
国見や金田一、そして飛雄と楽しそうにしてるのを何度も見掛けて、一生懸命でカワイイ子だな···とか思ってて。
そのうち手に入れようと思ってたのに···なのに、気が付けば岩ちゃんと付き合い出して。
岩ちゃんに取られたのは悔しかったけど、悔しさを敢えて仮面で隠して絶対に手を離すなって祝福したのにさ?
でも今は···良くも悪くも、フリー。
今日一日が終わったら、真面目に声を掛けるから。
それまで、待っててよね···紡ちゃん?