第32章 不協和音
及「岩ちゃん、ホントそれやめて?リアルに痛いからね!ねっ!」
岩「真面目にやらねぇと、明日から痛いって言えない体になるけどいいか?」
及「あーっ!オレすっごい働きたくなってきた!いやぁ、なんだろうこの湧き上がるパワーとか!」
···どうツッコミいれたらいいのか分からないんだけど。
そしてどこで止めに入ったらいいのかも。
岩「じゃ、決まりだな。お前は今日ずっと主審をやらせてやるから感謝しとけ、俺に」
及「えぇっ?!今日ずっと?!」
岩「スッゲー働きたいんだろ?あぁ?」
及「···はい、感謝します。って事で···紡ちゃんにハグ!!」
『えっ?!』
一瞬の隙をついて及川先輩が両腕を広げて抱きつこうとして来る。
澤「っと···セーフ」
『大地さん?』
グイッと腕を引かれて、気が付けば澤村先輩の後ろに隠されていた。
及「チッ···さすが、守備の範囲が広いね」
澤「それは、お褒めに預かり?」
及「あ~あ、せっかく紡ちゃんが来るからギューってしてエネルギー貰おうと思ったのにさ?」
さっき、パワー湧き上がってませんでしたか?と言いたいけど、ここは黙っておこう。
じゃないと、なんか余計に拗れそうな感じがする。
岩「ったく···澤村、あと頼んでいいか?俺はこのクソ野郎が仕事するのを見張る」
及「クソとか言わないでよ!」
岩「···うんこ野郎とどっちがいい?」
及「どっちもヤダよ!!」
おら来い!と及川先輩を引きずりながら連れていくハジメ先輩にお礼を言って、自分達も戻りましょうかとジャグを見た。
澤「っていうか、随分とびしょ濡れだな。岩泉と水遊びでもしてたのか?」
『違います!これはハジメ先輩がカップ洗いながら振り返った時に水が···』
そこまで言って、ようやく自分の格好に気が付いた。
私いま···白いTシャツだ···
澤「控え室戻ったらすぐ着替えなさいな。スガに見つかる前にね」
澤村先輩がジャージの上着をフワリと掛けてくれて、袖を通す。
澤「やっぱ俺のじゃ大きいよなぁ···上はともかくとして、下···履いてないみたいに見える」
『···さすがムッツリ大王、ですかね?清水先輩に報告しなきゃ』
思わずそう言って笑いながらファスナーを上げれば、澤村先輩は、その通り名はやめてくれ···と笑った。