第32章 不協和音
ハジメ先輩が何度も何度も頭をぽんっとするのを感じて、何となく胸の奥がムズムズした。
『ハジメ先輩···それ以上ぽんぽんしたら背が伸びなくなる···』
照れ隠しに言えば、ハジメ先輩は笑いながらそれを繰り返す。
岩「お前まだ成長期を待ってんのか?もう止まったんじゃねぇの?」
『あーっ!それはヒドイ!···もしかしたら1年後位にビヨーンって背が伸びてハジメ先輩より大きくなってるかも知れないのに!!』
そう言って返せばハジメ先輩はピタリと動きを止める。
岩「180越えの紡···どう思う?」
笑いを堪えながら私の後ろに問いかけるハジメ先輩を見て振り返ると、ハジメ先輩と同じように笑いを堪える澤村先輩がいた。
澤「それは、ちょっと···ナイかも」
岩「だよな···絶対ありえねぇよ」
『大地さんまで···1年後、ビックリしないで下さいよ』
岩「まだ言うか?!」
ゲラゲラと笑う2人を前に、1年後の事は誰にも分からないし!と言って背中を向けた。
澤「紡、そんなに拗ねるなよ」
トンっと肩を叩かれ、また、振り返る。
『大地さんもビックリしないで下さいよ?···1年後の私に』
チラリと顔を見ながら言えば、ちょっと屈んだ澤村先輩が私の耳元で小さく囁く。
澤「紡は·········だから」
···。
『大地さんは、いつから及川先輩のマネをするようになったんですか···』
囁かれた言葉に、顔が熱くなる。
パタパタとわざとらしく手で仰いで見せて、今日は暑いなぁ···と顔を横に向けた。
岩「及川?···澤村、なんて言ったんだ?」
澤「えっ?···それは、まぁ···ハハッ」
及「オレはなんとなく分かっちゃうケドね?」
及川先輩?!
岩「···及川、お前またサボってんのかよ」
及「やだなぁ岩ちゃん!ちゃんと机とか並べて来たから!ほら見てアッチ!」
及川先輩が指さす方を釣られて見てみれば、そこでは金田一くんが並べた長テーブルを雑巾がけしていた。
岩「って、金田一にやらしてんじゃねぇよ!」
及「違うよ岩ちゃん!あれば金田一が是非とも手伝いたいっていうから!」
岩「ほぅ···金田一が?あいつは確か、国見達と案内係を頼んでたハズだけどな?···俺が」
顔の前にゲンコツを持ち上げるハジメ先輩に、及川先輩の顔色が変わる。