第32章 不協和音
桜「それに、紡はもうバレーを辞めた理由の事を吹っ切れてるよ。今は、今日これからの事で頭がいっぱいになってるけど、必ず···君達の輪の中に戻って来るから」
慧「そうそう。あのチビ助は脳みそ自家製だから、1度にたくさんは考えられんのよ、な?」
桜「その辺は慧太によく似てるけどね」
慧「おいおい···同じ顔してオレをディスるなよ」
桜「同じ顔してても、ここのデキは違うんだよ」
桜太さんが自分の頭をつつきながら言えば、それを見て慧太さんが苦笑を浮かべる。
なんだかそのやり取りを見て、俺も笑ってしまった。
桜「肩の力が抜けたかな?怖ーい顔してる澤村君がいると、キラキラの女の子達が変に力んじゃうからね?」
慧「だな。あ、そうだ澤村と菅原。お前らは今日、紡の全開バレーバカを見たらチビるぜ?」
え、ち、チビる?!
桜「かもね?」
かもね?!
菅「それってどういう?!」
桜「それは内緒かな?ほら、お楽しみは後の方が期待するだろ?」
慧「ヒーローは遅れてやってくる!みたいなよ」
桜「それはちょっと違うけど。ま、見ててよ?君達の練習の中の紅白戦とはひと味違う紡をさ?」
ね?といつものように微笑みながら、桜太さん達は武田先生の所に行ってしまった。
菅「いつもと違う紡ちゃんって、なんだろうね」
「さぁ···でも、桜太さん達がそう言うんだから、俺達は見てるしかないだろ」
菅「···だよね」
「そんな事より、俺らも準備手伝うぞ。スガは道宮達に指示受けて動け。俺はとりあえず、紡の所に行く。行きは岩泉達がいたけど、帰りもいるとは限らないからな」
菅「え···大地だけ紡ちゃんトコとかズルい」
「うるさい、部長命令だ」
菅「わっ、出た出た部長命令」
大げさに笑うスガの背中を叩きながら、早く行けよと付け加える。
気が付けば、さっきまでの息苦しさが抜けて、いつも通りの自分に戻ってる···
そう思いながら、よしっ!と胸を張って控え室のドアから外に出た。