第32章 不協和音
『じゃあ、今日は宜しくお願いします、矢巾さん』
矢「オッケ!じゃ、早速荷物運びながら体育館まで案内するから。国見、金田一も荷物持ってあげて」
矢巾さんの言葉に2人が荷物を手分けして持ち始めると、矢巾さんは私達の後ろを見て姿勢を正した。
矢「青城の矢巾です。体育館までご案内しますから、オレ達に着いてきて下さい」
武「ご丁寧にありがとうございます」
慧「···ってか、国見に金太郎じゃん」
国「こんちはっス」
金「金田一です!」
慧「まぁまぁ、いいじゃねぇか金太郎で」
···いや、慧太にぃが呼ぶのはアウトでしょうに。
桜「慧太、お前は紡の真似しちゃダメだろ?···今日はよろしくね、みんな」
国「桜太さんも?···城戸、今日はどうなってんだ?お前の父兄参観か?」
ポソッと耳打ちをする国見ちゃんに軽くパンチをして、桜太にぃたちは外部コーチとしての同行だからと説明をする。
国「外部コーチ···うちの溝口コーチみたいなもんか?」
『まぁ、この交流戦に限ってだけだけどね。それは私もだけど』
国「試合、出んのか?」
『···分かんない。頭数合わせで頼まれたから』
国「あっそ。ま、どっちでもいいけど」
じゃあ聞かなくてもいいじゃん!と思ったけど、そこはまぁ、相手は国見ちゃんだし···とため息だけを吐いた。
国「つうかさ?お前の兄ちゃんズはいいとして、なんで男バレの2人も来てんだ?」
『それは、私も朝まで知らなかったけど応援っていうか、お手伝いっていうか···』
チラリと後ろを歩く澤村先輩達を見れば、視線に気付いた菅原先輩が駆け寄って来た。
菅「なになに?呼んだ?」
『···呼んでません、ひとことも』
菅「え~?だっていま、紡ちゃんから熱い視線が届いたんだけどなぁ?」
背後からぴったり抱き着くように体を寄せる菅原先輩から逃れるように体を捩れば、更にギューって抱き着いてくる。
『スガさん···セクハラ禁止です!清水先輩に言いつけますよ!』
慧「潔子ちゃんに報告する前に···オレが潰す。菅原、オレの目が黒い内は紡にベタベタさせん」
『···とっくに節穴でしょ』
慧「お前なぁ!」
武「あはは···仲良しさんですねぇ」
のんびりとした口調で言う武田先生に脱力しながら、体育館までを歩いた。