第32章 不協和音
武「それでは皆さん、忘れ物などはありませんか?」
いつもと同じように、武田先生が学校のマイクロバスを用意してくれて荷物を運び入れた。
武「お弁当や水筒は持ちましたか?それから、」
菅「先生···小学生の遠足じゃないんだからさぁ」
ひとりひとりの顔を見ながら持ち物忘れは···なんて聞いていく武田先生を見て、菅原先輩が苦笑を見せた。
慧「ま、アレだ。若干···見た目が小学生っぽいのはいるけど···な?」
『ちょっと!!』
どわっと湧き上がる笑いに包まれながら、私は最後の荷物を詰んだ。
朝、学校へ来た時に澤村先輩と菅原先輩の姿を見つけた時は、普通に男バレも練習があるからだと思ってたけど。
まさか、この2人が同行するとは聞いてなくて。
未だにちゃんと澤村先輩とは話が出来てないから、何となく気まずい雰囲気のままなのが···なんとも言えなくて。
助っ人の1日が終わったら、ちゃんと話さなくちゃ。
武「それでは出発しましょう。桜太さんの車の件は先方に伝えてありますから乗り入れ大丈夫です」
桜「お手数をお掛けしました」
慧「じゃ桜太、現地でな」
さも当たり前の様にマイクロバスに乗り込む慧太にぃを見て、桜太にぃと一緒に来るんじゃないの?と尋ねれば。
慧「JKに囲まれたドライブの方が楽しいだろ?」
···と、ご機嫌で答えられた。
『慧太にぃが一緒とか、最悪なんだけど』
桜「そう膨れるなって。アレでも慧太はマイクロバス運転出来る免許あるんだから、先生に何かあったら交代出来るからだよ。それに俺はいつ病院から呼び出されるかわからないから、念の為の自分の車ってだけだから」
絶対、慧太にぃの隣にだけはならないようにしよう。
道宮先輩と打ち合わせとかあるだろうし、その辺のメンバーの近くに座れば、とりあえずは心清らかに青城まで向かうことが出来る。
て、思ってたのに。
最後にバスに乗り込むと···
菅「あ、来た!紡ちゃんの席、確保しといたからね!!」
『すみません、ありが···』
ステップを上がりながら菅原先輩の声がする方を向けば、ブンブンと大きく手を振ってくれていて···その場所を見て固まってしまう。
なぜ···そこなんですか菅原先輩···
しっかりと荷物を置いて確保された場所は、菅原先輩の真横をキープされていた。