第32章 不協和音
~ 岩泉side ~
及「えぇぇぇぇぇっ?!女バレの助っ人?!」
「うるっせェなクソ川!帰り支度くれぇ黙って出来ねぇのか!」
シャツのボタンに手を掛けながら振り返れば、及川が俺を思いっきり振り返った。
及「···岩ちゃん、紡ちゃんが明日···ここに来るって」
「は?」
及「女バレの助っ人だって!」
「だからそれがどうした。助っ人っつってもプレーヤーとは限らねぇだろ」
それはそうだけど···と及川がしょぼくれたが、急に機嫌よくなったと思ったら。
及「でも紡ちゃんには会えるんだよ?!」
···そーかよ。
お前の頭ん中は、女バレの交流戦じゃなくて紡かよ。
そう思いながらも、なんとなくイラつくのは気のせいか?
いや、アイツはいつでもイラつかせる事には天才的な能力を発揮するからな。
及「岩ちゃんは紡ちゃんが来るかも···っていうか、来るのに嬉しくないの?」
「は?」
及「あ、わかった!家に帰ってからひとりでニヤニヤするんでしょ?」
「なんでだよ!!」
思わず殴れば、頭を押さえて及川が蹲る。
及「痛いよ岩ちゃん···暴力反対!まっつんもマッキーもそう思うでしょ?!」
花「まぁ···いまのは」
松「お前が悪いな。岩泉はひとりでニヤニヤなんかしねぇよ。噛み締めるタイプだ」
「するか!!」
花巻と松川のアホな発言にツッコミを入れて、帰り支度を進めていく。
紡が···もしプレーヤーとしての助っ人なら。
それはちょっと、見てみたい気もするが···それを言えば及川はギャーギャーとうるさくなるからな。
明日は···オフだって、言ってたな。
そして女バレの交流戦の見学してもいいと聞いた。
プレーヤー、だったら。
プレーヤーじゃないとしても。
顔合わせるくらいなら。
いろんな言い訳が頭の中を巡って行く。
及「まっつんもマッキーも女バレの交流戦見に行こうよ!ってことで岩ちゃんも参加ね!」
「勝手に決めんな」
そんな返事をしながらも、こっちの様子を伺う国見達にも声を掛ける。
「お前らも来るんだろ?」
金「オレらも行っていいんですか?」
「お前らは同級だし、知った顔が多い方がアイツも喜ぶだろ。それに矢巾も顔見知りだしな」
素っ気ない素振りをしながら、ロッカーの扉を閉めた。