第32章 不協和音
そしていよいよ、その時間が来た。
けど。
桜太にぃはさっき病院から電話があって、病棟で担当してる子供が急変して、うわ言のように桜太先生の事を呼んでるって言われて慌ただしく病院に向かってしまった。
だから、いまこの大事な時間にコーチのイスとして用意された場所には···
慧「あ?なんだ紡。なんかオレに言いたいことがありそうだな?ん?」
···このヒゲしかいない。
もの凄い不安しかない···気がする。
『別に···って言うかさ!毎日毎日ここに来てるけど、仕事はいいの?!お客さんが離れてクビになるよ!』
慧「平気平気。今日もちゃ~んとギャルとマダムのお世話をして来ましたから」
『マダムのお世話とか、なんかやらしい』
慧「なんでだよ!」
ま、桜太にぃだって命の天秤に私達を乗せるほど安易な仕事をしてるわけじゃないから。
それに命の大切さは、桜太にぃは誰よりも知ってるから。
繋「そろそろ始めっか?紡、そっちの準備は出来てんのか?あと、桜太にメンバーは紡に聞けって言われたぞ?」
『あ、うん。メモしといたから、これそのまま渡すね』
昨日見た名前をメモしたものを繋心に渡すと、それに目を通した後、繋心はいいのか?と聞いてくる。
『大丈夫。だって桜太にぃが考えてくれたメンバーなんだもん。圧勝出来るなんて思ってないし、でも···点が取れないなんて事も、思ってもないから』
繋「おぅおぅ、随分と強気な発言だな?オレにケンカ売ってんのか、チビ助」
『そうじゃないって···』
慧「おぅおぅ、お前も随分と強気な態度だな?ウチの妹に文句でもあんのか?ん?それとも、オレにケンカ売ってんのか?売るなら買うぞ?あ?」
繋「痛ってぇな!耳!耳引っ張んな!」
慧「お前がその態度を改めたら離してやる」
『ちょっと慧太にぃ!そういうのやめてよね』
桜太にぃがいないと、慧太にぃはすぐ繋心に絡むんだから。
『繋心、とりあえずメンバーはそこに書いてある人達でお願い。あと審判とかは残りのメンバーと、足りなかったら慧太にぃを好きに使って?』
慧「おいコラ紡。オレは一応コーチだろうが···って、おい!スルーすんな!」
めんどくさ···
繋「んじゃ、始めっか。名前呼ばれたヤツ、コートに入れ」
繋心がメモ通りにコートにメンバーをいれる。
ミニゲーム、開始。