第32章 不協和音
桜「紡が考えてることは当たってる。だけど、道宮さん達も条件は同じだよ」
慧「お前が菅原達を最初に呼びに言ってる間、桜太が全員集めて説明したからな。これからここに来るメンバーのクセや力量を情報として吸収しろってな」
『そうなの?!知らなかったのって、私だけ?』
道宮先輩達も、ひと言くらい教えてくれてもいいのに···なんて思いながらも、きっと桜太にぃからそう言われたんじゃ、それどころじゃなかったのかな?なんても思ったりする。
桜「紡は、敢えて彼女達と同じことを言わなくても分かるだろ?彼らのポテンシャルは」
慧「女子チームの中で唯一、お前が澤村達の1番近くにいるんだからな。揺さぶって体制崩してやれ」
揺さぶって崩す?
少しの事を考えながら、もう一度ノートに書かれたメンバーの名前を確認する。
もし。
もし私が揺さぶりをかけられるとしたら、この人しかいない。
揺さぶって、動揺させて、思案を止める。
逆に火をつけてしまったとしても、そうなるまでを考えておけば作戦としては成り立つ?
そして揺さぶりをかけるとしたら、自分がファーストタッチをしたらダメなんだ。
桜太にぃが言ってた通り、男女チームは女子チームには負けないと思ってる···と思う。
だったら逆に、それを利用してしまえばいい。
そして青城女子チームとの1戦の直前にそれをやるって事は、その交流戦でそれが機能するかの試験的なワンプレイゲーム。
···そういう事なんだ。
桜「その顔は、突破口への糸口が掴めたみたいだね?」
『ほんのちょっとの糸先だけど、やって失敗しても次の糸を掴めばいいかなって』
その糸が、蜘蛛の糸になるか···ロープに化けるかはやってみないと分からないけど。
試してみる価値はあると思うから。
慧「お前、随分と悪どい顔してるの気付いてるか?」
『悪どいってなに?!悪人顔は慧太にぃの方がピッタリじゃん!』
『「 だってヒゲだし! 」』
桜「アハハッ···言うと思ったけど、まったく息ピッタリだな慧太と紡は」
リビングに桜太にぃの笑いが響く。
慧「笑いすぎだろ」
『慧太にぃの方がいつもうるさい』
慧「は?!いいのかそんなこと言って」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ私達に向かって、やっぱり落ちるのは···
桜「2人ともいい加減にしなさい!」
桜太にぃのカミナリだった。