第32章 不協和音
慧「山口。あんま紡を甘やかすなよ?」
山「えっ?!オレですか?!···あ、ちょっと城戸さん?!」
右に左に動こうとする山口君のシャツを捕まえて隠れ蓑にする。
『山口君お願い、どうか私を慧太にぃから助けて』
山「えぇっ?!」
ぴったりと隠れるようにすれば、そこでまた黄色い声が響いた。
「「 キャーっ!そこのふたり仲良すぎでしょ!! 」」
···あ、火に油を注いでしまった。
菅「紡ちゃん···オレというものがありながら山口を選ぶのか···」
慧「そもそも菅原はこっちサイドだろうが!」
道「ほら菅原!いい加減諦めな?城戸さんは菅原なんかアウトオブ眼中だって!」
ケラケラと笑う道宮先輩に菅原先輩が笑いながら反論するも、騒ぎはなかなか落ち着かず···遂には···
桜「はい、そこまで!···時間は限られてるんだから、そろそろ練習開始するよ?」
出た···穏やかに見せながらも完全に笑い切れてない桜太にぃの仏の微笑み。
私にはそれが何を意味してるか分かってるけど、先輩達にはやはり通じず···それはそれで黄色い声が体育館に響いた。
『道宮先輩···だ、打倒青城!ですよね?!ね?!』
ムリヤリ感が匂う掛け声を掛けて、意識を練習へと持っていく。
じゃないと···私がヤバイ。
家に帰ってからがヤバイ!
だって明日は練習の最後に繋心チームと1セットプレイするんだから!
慧「うーっし!じゃあ早速始めんべ?」
「「 はいっ! 」」
慧太にぃの鶴の一声で先輩達がコートへ入って行く。
なんか···
『始まる前から疲れた···』
山口君のシャツを掴んだまま項垂れて、大きく息を吐いた。
山「えっ、もう?!」
『もうですよ···ハァ···』
山「オレ、頑張ってブロックするから!なるべく城戸さんを動かさないように!うん!頑張る!!」
『アハハ···ありがとう山口君。あとスガさんもね?ワンチじゃなくて完璧ブロックでお願いしますね?くれぐれも、完璧な方で』
菅「うぅ···オレだけ塩対応かよ。何が山口と違うんだろ···」
しょんぼりする菅原先輩をこっそり笑いながら、桜太にぃの特別練習が始まった。
明日はとうとう、繋心チームとの練習試合か。
その次は、青城の女バレとの交流戦が待ってる。
私もそろそろ、気合い入れて仕事しなきゃ!