第32章 不協和音
『···え?なんで??あれ?!あっ!ちょっ、絡まった!!』
バランスを崩してネットに凭れてしまい、バレッタがネットに絡まって身動きが取れない格好になってしまう。
縁「城戸さん···プッ···」
『縁下先輩!笑った?!』
サッと見れば菅原先輩までも横を向いて笑いを堪えてるし!
慧「ぎゃっははははっ!!紡···お前なに遊んでんだよ!ネットに引っ掛かるとか虫かお前はっ!!」
豪快に笑い出す慧太にぃを軽く睨みながら、笑ってないで助けてよ!と両手をバタつかせる。
慧「あ~はいはい···いま取ってやるから待っとけ」
『痛たたっ、ハゲる!バレッタ壊れないように優しく取ってよ···大地さんに貰ったやつ、気に入ってるんだから』
慧「へ~い」
まずは先にコレ外さねぇとな···と言って髪を解いていく慧太にぃに言えば、軽い返事が返ってくる。
道「えっ···澤村に貰ったの?」
そばで私と慧太にぃのやり取りを聞いた道宮先輩がチラリとバレッタを見て、私の顔をじっと見る。
『はい。前に大地さんが指先にケガをしちゃって応急処置したんです。傷は小さかったけど、血が出てたし···そしたら大地さんが、お礼にって言って渡してくれました』
道「そう···なんだ」
『私は当たり前の事をしただけだから、受け取るのは今回だけですよ?って。でも、可愛いし···気に入ってるんで毎日付けてます···道宮先輩?』
何となく表情を曇らせる道宮先輩の顔を覗くと、それに気付いた道宮先輩がハッとした顔を見せた。
道「う、うん、確かに可愛い!私も髪伸ばしたら、こういうの付けてみたいなぁ!なんて」
『ねっ!可愛いですよね!それに···美味しそう!』
道「えっ?!お、美味しそう?!」
慧太にぃに外されて手のひらにコロンと乗せられたバレッタを見せながら言えば、途端に道宮先輩が笑い出した。
道「美味しそうって···バレッタ見て美味しそうって言う人、初めて見たよ」
『だってそうなんですもん···』
慧「お前はそうやって菓子ばっか食ってるから上に伸びずに横に伸びるんだよ···ほら、取れたぞ」
『ありがとう、っていうか横には伸びてないから!』
失礼だよ!と言いながらも、ついでだから髪まとめて欲しいなぁ?と慧太にぃに甘えてみると、仕方ねぇなぁ、なんて言いながら簡単に結い上げてくれた。
