第32章 不協和音
桜「話は逸れちゃったけど、要するに···メンバー全員が全てのポジションをこなせるようになれば、どんな攻撃が来ても慌てる必要がないって事かな?とりあえず今日は終わりまでこの練習をしよう。明日からはセッターを入れ替えながらスパイク練習やレシーブ練習も混ぜて行くから」
「「 はい! 」」
慧「う~ん、いい返事だこと。野太いアイツらのとは違って華があるっつーか」
うんうんとご機嫌に頷く慧太にぃを呆れた顔で見ながら、桜太にぃが続きを始めようかと腰を上げるのを見て、私達も立ち上がり元の位置まで歩き出した。
桜「あ、紡はちょっと俺の用事を頼まれてくれる?」
コートに戻ろうと足を出せば、桜太にぃに呼び止められる。
『用事?別にいいけど、なんの?』
桜「今から烏養の所に行って、菅原君とそれから···そうだなぁ、縁下君あたりがいいかな?その2人を借りて来て貰える?」
『スガさんと縁下先輩を?···なんの為に?っていうか、向こうも練習してるのに?』
桜「大丈夫。烏養とはさっき話を通してあるから、行けば分かるよ。菅原君が手が開かなかったら影山君でもいいけど」
『よく分からないけど、とりあえず呼んで来ればいいんだよね?···行ってくる』
本当はちょっと、向こうの体育館には行きにくいけど。
桜太にぃが用事があるなら、仕方ない。
道宮先輩にひと言それを告げて、私は男バレが使っている体育館へと駆け出した。
近付くに連れて聞こえてくるボールの跳ねる音や声。
「っしゃ!」
あはは、これは日向君の声。
「お願いします!」
これは山口君の声。
「山口!ちゃんとボール見ろ!!」
···絶対、繋心。
「すみません!もう1本!」
いつもならその場でみんなの練習を見ながら仕事をしてるのに、そうじゃない今は···声だけ聞くとソワソワしちゃう。
みんな、頑張ってるんだなぁ。
···私も、決めた以上は頑張らなきゃ!
繋「よし!これで一周まわったな?ドリンクタイム!」
「「 ッス!! 」」
中から聞こえる声に慧太にぃの言葉を思い出して小さく笑う。
同じ返事でも、やっぱ男女の違いって大きい。
ニマニマしてしまう顔を両手で叩き、体育館の入口から顔を覗かせた。