第32章 不協和音
~ 縁下side ~
コーチに給水タイムを告げられて、スクイズを口にしながら何気なく振り返れば···あれ?
体育館の入口から、ひょこっと顔を出す城戸さんが見えた。
『た···頼もう!』
「ブッ···!!」
西「うわっ、力どうした!!」
喉を通りかかったドリンクが、思わぬ言葉に逆流してしまった。
繋「アホかお前!道場破りかっ!」
そう!それだよそれ!
頼もう!ってなに?!
ゴホゴホとむせながらタオルで口を拭けば、遠慮がちに中に入って来る城戸さんと目が合ってしまう。
···なんか気まずい。
『だって、なんて言って入ればいいか分かんなかったんだもん···』
繋「だからって頼もう!はねぇだろうが!ここはお前のホームだろ、あ?」
『いいじゃん別に!それより繋心、桜太にぃに頼まれて来たんだけど···』
繋「桜太に?あぁ、アレな」
コーチと城戸さんが何かを話しながら、時々オレをチラッと見るのが気になって、顔を向けたままにしてみる。
繋「菅原と縁下?あぁ、なるほどな。わかった、いいぞ。おい菅原、あと縁下···ちょっと来い」
···え、やっぱりオレ?
呼ばれるままにスガさんと歩み寄れば、女バレの練習の手伝いに行って来るようにと言われた。
「スガさんは···何となく分かりますけど、オレもですか?」
繋「そうだ。桜太からのご指名だから、しっかり手伝いして来いよ?」
「はぁ、まぁ···向こうで何をすればいいのか全然読めませんけど、とりあえず呼ばれているなら行ってきます」
菅「なんだ縁下?気が進まないならオレだけでもいいぞ?」
ウキウキしながら言うスガさんは、なんかもう···あからさまに嬉しそうだけど。
繋「いや、菅原だけじゃ多分···まぁとにかく行って来い。たまには違う練習方法を経験するのもアリっちゃアリだからな」
コーチのあの歯切れの悪い感じ···なんだか怪しさ度が高いけど、城戸さんのお兄さんからのご指名だから変な事はさせられないだろう。
『スガさんと縁下先輩、お願い出来ますか?』
小動物みたいに小首を傾げながらオレ達の返事を伺う姿を見ながら、まぁ···未知なる世界へと行ってみるか、と頷いた。