第32章 不協和音
桜「もちろん、スパイカーまで繋ぐ事が出来なければ流れが変わるどころか···切れてしまう。だけどね、相手チームを撹乱させる事もフェイクのひとつなんだよ」
『撹乱?』
桜「そう、撹乱。大体のチームはコートにはセッターは1人、もしくはツーセッターだと思う。例えば烏野男子チームの場合、セッターは主に影山君が入ってるよね?だけど、そこにもし菅原君もいたら相手チームはセッターが2人いるってだけで警戒するんだよ。ファーストタッチで影山君がカットしても、菅原君がいたらセッターは保持されている!とかね」
あぁ···なるほど。
影山達に人物を入れ替えて考えたら、なんとなく桜太にぃが言おうとしてる事の輪郭が見えて来た。
敵チームからのボールを影山がカットしても、セッターとしては菅原先輩がいてトスは上がる。
そのトスの先には、スパイカー陣がいて···あれ、待って?
影山はセッターだけど、いざと言う時はスパイクだってブロックだって出来る。
菅原先輩もそれは同じ。
そしたらトスはどこに上がっても···打てる?!
慧「要は、アレよ。相手からしたら誰にトスが上がって誰がスパイクを打ってくるかっていう予測が付けにくいってヤツな」
道「確かにそう言われたら、私達も同じ事をされたら混乱しちゃうかも···」
だろ?と言いながら慧太にぃはニカリと笑った。
桜「ただ違うのは、単なるフェイクじゃ終わらせないって事。今後の為にも、少しずつこういう練習を入れていけば多少は身に付くんじゃないかな?って」
慧「そうそう。なんせ俺らも子供の頃にハチャメチャなジジィにこういう練習させられたもんなぁ···」
桜太にぃ達が子供の頃の···?
『それって、じっちゃの事?!···っていうか慧太にぃは今でも子供じゃん!すぐ意地悪するし!』
慧「もう大人だっつーの!なんなら脱ぐぞ?!見るか?!」
『慧太にぃの裸なんて見慣れてます!』
慧「ほほぅ···そう来たか。最後の一枚砦のその先も、か?」
最後の一枚砦?
最後の···一枚。
頭の中にニヤリと笑いながら最後の一枚砦と言われる物に手をかける慧太にぃが浮かぶ。
うわぁ···
『見るわけないでしょ変態!』
道「き、城戸さん落ち着いて?!」
仰け反りながら叫ぶ私を道宮先輩が支えてくれる。
桜「そういう所が子供なんだよ慧太は」
