第32章 不協和音
~ 武田一鉄side ~
教頭先生に短期間の外部コーチの承認をして貰えたのはいい事だけど···まさか、こうなるとは僕も予想外だった。
だけど決まってしまった事には変わりないし、報告義務はあるのだから澤村君に成り行きを説明したら納得してくれるでしょう。
彼らも、青葉城西との練習試合から勢いがついたとなれば、ね。
それに、城戸さんが女子バレー部で助っ人としてコートに立つとなれば、彼らも···
それにしても城戸さんは僕のところに来て数日間女子バレー部に在籍することになったからと挨拶に来てくれるとか、驚いたなぁ。
わざわざ報告ありがとうと返せば、本来の在籍は男子バレー部なんだから、顧問に報告するのは当然ですよ?と笑っていて。
う~ん···しかしながら、そう言いながらもどことなく寂しげに見えたのは、僕の気のせいでしょうか?
まぁ、それも合わせて澤村君達と話せば詳細も分かる、と言う事で。
校舎から体育館へと続く渡り廊下に出れば、ちょうどそこに清水さんが水道場に出ているのが見えた。
「清水さん、お疲れ様です。もしかして今、休憩中···でしょうか?」
清「武田先生。みんなは給水タイムが終わってもう少ししたら、練習始めるみたいです」
なるほど···では、澤村君達と話すなら今がいいかも知れない。
清水さんにお礼を言って、早足で体育館へと入り澤村君に声を掛け簡単な話の流れを伝えた。
澤「部員の何人か、ですか?」
「えぇ、教頭はそう言ってました。全員で行ってしまえば練習が出来ない、かと言って誰も行かないのも···と。なので誰が行くかは澤村君達にお任せします。烏養君、申し訳ありませんが、当日僕は顧問代理として同行しなければならないので、こちらをお願いしても?」
繋「それは構わないけどよ。今の話だと、練習する事を考えたら何人か、ではなくて部長、副部長が代表として行った方がいいんじゃないか?その方がカッコつくだろ?」
部長、副部長···と言うことは。
菅「オレと、大地が···?」
繋「あぁ。バラバラと行くより、そっちの方がいいだろ。もちろん、戻ってからはみっちり練習に励んで貰うけどな?」
「そうしましょうか澤村君」
何かを考え込むように表情を曇らせる澤村君に言えば、少しの間を開けて澤村君も頷いた。