第32章 不協和音
何を、どう···見ているんだろう。
練習開始してからずっと、桜太にぃも慧太にぃもイスに腰掛けたままでコートの中を見てる。
時々2人で何かを話して、桜太にぃがコートにメモを取っているみたいだけど。
そのメモを見ながら、慧太にぃも身振り手振りを加えながら桜太にぃに何かを話してる。
私は、と言えば。
練習が始まってから桜太にぃに言われて、ボール拾いばかり。
いったい、どういう事なんだろう。
道「オッケー!スパイク練習終わり!みんな給水して!」
「「 は~い! 」」
···なにこの気が抜けるような返事。
道宮先輩が給水タイムの声掛けをした途端、急にみんな笑顔になってドリンク飲んだり、汗ふきシートであちこちの拭いたり。
さすがに田中先輩みたいにガバッと脱いだりするような人はいないけど。
それでも、なんか···いつも見て来た風景とは全く別次元の感じがする。
中学の部活の時って、こんなだったっけ?とか思ってしまうくらい、私はそういう場所から離れてしまったいたんだなと思った。
慧「ほれチビ助。球拾いしてたって汗はかくし喉は乾くんだから、ちゃんと水分取っとけ」
『球拾いとか言わないでよ』
慧「じゃ、ボール拾い係?」
同じ事じゃん!と言いながら突き出されたマグボトルを奪い取るように手に取った。
慧「サルかお前は!」
『イチイチうるさい』
べーっと舌を見せながらマグボトルに口を付けると、いつもと同じ味のミルクティーに癒された。
桜「みんな、ちょっといいかな?」
何かを記録してたノートと睨めっこしていた桜太にぃがイスから立ち上がり、ボトル持ったままでいいから集まってと声を掛ける。
慧「決まったのか?」
桜「···まぁね。まだきっと改良はあるんだけど、時間もないしね。という事で、今から簡単に説明するからよく聞いて?」
そう言って話し出した桜太にぃは、ノートを見ながらメンバーそれぞれの弱いポイントや伸びがありそうな所を1人ずつに説明していった。
あんな短時間で、メンバー全員の事を細かくチェックしてたんだ···
だから私は、ボール拾いに回されてたのか。
私の事なんて、桜太にぃからしたら今更チェックするまでもないって事だもんね。
最悪は家でもわかる事だし。
桜「じゃあ指摘した事を考えながら、グループに分かれて早速やってみようか」
