第11章 上達への近道
慧「お前、ホントあれな、食べ物見るとご機嫌だな?お子ちゃまだ、お子ちゃま!」
そう言って慧太にぃがゲラゲラと笑う。
『そ!そんなことないもん!絶対違うもん!』
私は反対側の席に座っている慧太にぃの方へ身を乗り出しながら反論すると、慧太にぃは、お?やんのか?などと言ってじゃれ合う形になる。
そんな私たちを見て、桜太にぃがエプロンを外しながら
桜「こら2人とも。ご飯の上でバタバタしない!」
と一喝し、2人してシュンとする。
そんな2人を見て桜太にぃは、どっちもお子ちゃまだね、と笑いながら席につく。
『桜太にぃまで、お子様扱いする・・・』
桜「まぁ、そう、拗ねるなって。ほら、今日のポテトサラダにはリンゴ入ってるから機嫌直して?商店街で、おばちゃんがリンゴをオマケしてくれたから。紡、好きでしょ?ポテトサラダにリンゴ入ってるやつ」
席に座り直し、ウンウンと大きくうなづいて見せる。
桜「じゃ、食べようか?」
桜太にぃのひと言に、3人揃って手を合わせ、食べ始める。
『美味しい~!』
学校であれだけ動いて帰ってきたこともあり、料理上手な桜太にぃの食事は普段の何倍も美味しく感じられた。
我が家のルールで、食事中はテレビをつけたりしない。
その分、家族での会話を楽しんで、それでコミュニケーションを取れるようになっている。
そのせいか、両親がいる時も、今の様に兄妹だけの時も、テーブルを囲んで会話を楽しむのがいつもの事だけど・・・
今日は2人とも、お互いの仕事の話をしていて、私には内容がサッパリ分からない。
それを幸いとしてか、私は夕飯を食べながら日向君達の事を考えていた。
3対3の決戦は、土曜日だと言っていた。
練習出来る日数は、あと3日。
しかも時間も限られた中での日向君のレシーブ練習となると・・・。
なんとか2人には勝ってもらって、それでバレー部に入部して欲しい。
だってあんなに日向君頑張ってるんだし。
考え事をしながら、チラリと2人の兄を盗み見る。
例えば男同志だったら、どんな風に教える事が出来るのだろう。
私も私で、出来る限りの事はしているつもりだけど・・・
それでも直接相手の体に触れて、こうだ、ああだとは言えない。
どうしたものか・・・と、ため息をつく。
桜「どうした?もしかして食欲ない?」