第11章 上達への近道
どれくらい寝ていたのか。
ボンヤリとしながら目を開けると、見慣れたリビングの天井が目に入る。
あのまま寝てしまったのか・・・
ソファーに抱かれる体をゴロンと動かすと、自分が毛布に包まれホカホカと暖かいことに気づく。
んん・・・暖かい・・・毛布を手繰り寄せ、それを抱き締めるように腕に纏う。
・・・ん?
・・毛布?
フワフワした感触を再確認し、ガバっと起き上がる。
慌てて周りを見回すと、テーブルには出来上がりつつある食事の用意と、それを配膳している慧太にぃ、キッチンには桜太にぃが立ち、未だ手を動かし何かをしている。
マズイ・・・非常にマズイ。
今日の夕飯当番は私だったハズ。
スマホを掴み時間を確認すると、帰宅してから1時間半ほど経過していた。
ソファーの上に起き上がり、ペタンと座り込んでいると、配膳している慧太にぃが私に気がついた。
慧「お?やっと起きたか紡」
その声に反応し、桜太にぃも振り返る。
桜「よく寝てたみたいだね?」
2人とも私が当番出来なかったことを咎める事なく、微笑んでいた。
まぁ、あんまり怒られたことはないんだけども。
『桜太にぃ、慧太にぃ、ゴメンなさい・・・夕飯当番、私だったのに・・・』
何より先に謝ると、普段の当番の数は私が多いんだから、たまにはいいんじゃないか?などと慰められる。
桜「紡、それよりも早く手を洗っておいで?」
桜太にぃに促され、その場を離れた。
洗面所で手を洗い、正面にある鏡を見る。
『ひっどいなぁ』
そこには、あなたは花の女子高生ですか?と、聞いてしまいたくなるような、髪はボサボサの寝起きの私が映っている。
私は手を洗うだけではなく、ある程度の身支度までをしてリビングに戻った。
テーブルに着く前に1度キッチンへ向かい、何か手伝うことはないかと桜太にぃに聞くと、もう配膳も終わったから大丈夫だと背中を押されながら一緒に席につく。
はぁ・・・と、ため息をつきながらもテーブルの上を見ると、そこには、オムライスに、野菜たっぷりのコンソメスープ、ほぐしササミが乗ったサラダに、ポテトサラダ、デザートにはフルーツヨーグルトまでか所狭しと並べられている。
『うわぁ、美味しそう!』
さっきまでの沈んだ気持ちを跳ね除けるかのように、思わず言葉が出た。
そんな私を見て、2人が笑う。