第31章 ステップアップへのチャンス
対立って言うより、一方的にクロさんが澤村先輩に構ってるって感じだけど。
構われてる方の顔は、取って付けたような笑顔で目が笑っていない。
菅「見るなって」
『ですね···』
私の思考を汲み取ったのか、菅原先輩がケラケラと笑い飛ばす。
夜「そうそう。烏野の主将はともかく、クロは放置でいいからね?しょうもないヤツなんだから···っと、はい、取れた!」
『やった!解放された!!スガさんも夜久さんもありがとうございます!···影山め、後で仕返ししてやるんだから』
自由になったばかりの手をグッと握り、どんな仕返しをしようかと小さく笑った。
菅「その前に。片付け終わらせないと···だよ?」
ね?と笑う菅原先輩に、もちろんですよ!と大きく返し、さっきまで巻かれていたネットを纏め直す。
···のは、いいんだけどさ。
意外にこのネットって、重たいんだよね。
それに私の身長だと、結構持ち上げないと下に擦っちゃうし。
ま、何事も気合い!
せーのっ!って小さく呟いて持ち上げれば、何気にネットの端を踏んでいたらしくヨタついてしまう。
夜「おっと···ほら、貸してみ?オレが片付けて来るから」
『大丈夫です。今のは私がちっちゃいから持ち上げないとって気合い入れただけで』
背中に伸ばされた腕と、急に縮まった距離にビックリしながら言えば、クスリと夜久さんは笑った。
夜「気合い入れ過ぎだろ。女子は小柄でもオッケーじゃん?で、オレはドンマイ···」
え···?
あ、自分で言ってヘコむ···とか苦笑して私の肩を叩きながら、向こうにいるトラに用事があるから引き受けるよ、と笑って夜久さんは行ってしまった。
ネットを運ぶ夜久さんの後ろ姿を見て、中学の時のハジメ先輩と重なった。
あの時は私は、体育館の天井と照明の隙間に挟まって取れなくなったボールを何とか取ろうとサーブで狙ってたんだけど···取れなくて。
···というより、当たらなくて。
それを見ていたハジメ先輩が、笑いながら自分が取ってやるからお手本見とけ?って言って、数回私と同じ事をしたハジメ先輩がボールに命中させて。
岩 ー ほらよ。お前は変に気合い入れ過ぎなんだよ ー
『背がちっちゃい分、気合いで埋めないといけないから』
岩 ー ちっちゃくても別にいいだろ?女子なんだからよ ー