第31章 ステップアップへのチャンス
『女子でももっと背が欲しいんです!牛乳の代わりに毎日ヨーグルト食べても、全ッ然効果ないし!』
岩 ー それは、ドンマイだな ー
···って、ぽんっと肩を叩いてハジメ先輩を呼ぶ及川先輩の方に歩いて行った。
あの時に笑いながらハジメ先輩が言ったのと、いまの夜久さんの言った“ドンマイ”はそれぞれ意味は違うはずなのに。
なんだか妙に耳に残って、ずっと夜久さんの後ろ姿を見続けてしまった。
『夜久さんって学校でモテるんだろうなぁ』
菅「えっ?!」
無意識に呟いた言葉に菅原先輩が反応する。
『なんか周りにさり気なく先回りの気遣いとかして。きっとそういうのって、女子にはキュンキュン来るとかいうやつなのかな?あ、でもタイプ的に言ったらスガさんも夜久さんと同じ感じだから···スガさんが烏野のお母さんだったら、夜久さんは音駒のお母さんなんですかね?』
ウンウン、きっとそうだと顎に手を当てながら大きく頷けいて見せる。
菅「じゃあさ、同じようなタイプって事は···オレにもキュンキュン来る?」
『ないですね』
菅「そんなバッサリと···」
あからさまに肩を落とす菅原先輩を見て笑いながら、ちょっとだけ考えてみる。
本当の事を言ったら、全くなかったわけじゃない。
でもそれは女子特有のキュンキュン?とかではなくて。
ちょっと違う感じの、なんか上手く言えないけど、
そもそも私って、自分の部屋のパンダちゃん達とかにしかキュンキュンして死にそう!なんて思ったこと···ないかも?
ドキドキとか、そわそわとか、そういうのだったら経験はあるけど。
誰かを見てキュンと胸が···みたいなの、ない?!
···女子力なさ過ぎる自分がちょっと悲しい。
ま、いいか。
そのうち誰かにそういう気持ちになれたら、何かが分かるかも?ってことで。
『さて。大地さん達は放置して、私達は早く片付けしちゃいましょ?···おかーさん?』
菅「だから、おかーさんって···違ーう!!」
苦悩する菅原先輩の背中を押しながら、山口君からモップを受け取り1本渡す。
『負けたらジュース1本の勝負です。お先に!!』
菅「え?あっ?!紡ちゃんズリぃ!待て~!!」
ケラケラと笑ってモップを掛けながら走り回る。
たまには菅原先輩との鬼ごっこも、楽しいかも。
いつもは影山とばっかりだから。