第31章 ステップアップへのチャンス
『別にこの状況から助けて貰えるなら、大地さん限定じゃなくてもいいです』
黒「おやおや~?へぇ~、そうなんですか」
『そうなんです』
なんか怪しげな含みを持たせるクロさんに、私は負けずとそう返した。
菅「紡ちゃん、呼んだ?って、何してんの?」
『スガさん、どうぞ可哀想な私を救って下さい。このままじゃ私、誘拐されます···東京に』
菅「え?東京??」
夜「クロ···お前ホントにそういう冗談やめろっての···城戸さんを早く下ろせよ。こんなにネットでグルグル巻きにして」
菅原先輩の後から続いて駆け寄ってきた夜久さんが、クロさんを突っつく。
『あ、いや···それやったのはクロさんじゃなくて影山です』
菅「影山?アイツまたしょうもない事を」
ホントですよ、影山め···
黒「あ~ザンネン。せっかく攫ってこうと思ったのに」
夜「だから、仲間に誘拐犯はいらないっつーの!早く下ろせよクロ!」
へいへい、と言ってクロさんがゆっくりと床に下ろしてくれる。
助かった、かな?
菅「とにかくネット解かないとなー。あ、あとはコッチでやるんで大丈夫。おーい、大地ー!」
助かってなくもない?!
そこで、この状況で澤村先輩呼ぶ?!
澤「なんだよスガ···何してんだコレ」
菅「ん~、簡単に言うと紡ちゃん誘拐されます事件?」
澤「···は?」
菅原先輩、大事なところ端折り過ぎてませんか?!
『え、えっとですね、影山がネットグルグル巻きにして、取れなくてもがいてたらクロさんが···』
黒「そうそう、せっかくだから連れて帰っちゃおうかな~っていう、準備?」
澤「ははは···そんな余計な準備してたら、新幹線の時間に間に合わなくなりますよ」
黒「いやいや、別に次の新幹線に乗れば帰れますけど?」
···やめて。
ホント怖いから。
何この黒々しくて禍々しいオーラ···
菅「紡ちゃん、ちょいゴメンね」
おかしなバトルを始める主将ふたりを放置して、菅原先輩がネットごと私をススッと引っ張って移動する。
菅「とりあえず大地はほっといて、先にコレ取るべ?」
夜「そうそう。ウチのアホ主将も放置でいいから」
『···お願いします』
なんだか雰囲気の似た2人に囲まれてながら、少しずつネットを解いて貰う。
その間も何やら対立し合う2人の会話が聞こえていた。