第31章 ステップアップへのチャンス
え、ちょっと?!
『か、影山?うそでしょ??このまま私を置き去りにとか···しない、よね?』
何とか引き留めようと声を掛けても、振り返る影山は···ニヤリと笑って歩いていく。
こんな状態で、どうしろっていうのよ···
影山め···絶対前世は漁師か何かだな。
モゾモゾと動いても絡まりが酷くなるばかりで余計に身動きが取れない。
こうなったら、誰かに助けを求めるしか。
そう決めて顔を上げると、ちょうどそこに人影が落ちた。
黒「まったくカワイソウに。酷いことするなぁ、お宅のセッター君は」
『クロさん!ちょうどいいところに!!』
って···絶対その顔、可哀想とか思ってませんよね?!
黒「んん?なんか言いたそうだけど、聞こうか?」
『いえ、ナンデモアリマセン···けど、お手隙だったら助けて貰えませんか···?』
黒「手助けねぇ···んで、見返りは?」
『み、見返り?!?!』
どう見てもそれが必要な程の事じゃないよね?!
だけど今そんなこと言ったら、素通りされちゃうかも知れない。
『た、助けてくれてから考えます···』
黒「ブー!不合格。ってコトで···よっこいしょ、っと。んじゃ、行きますか」
え?
ええっ?!
なんでこの状態でお姫様抱っこ?!
『ク、クロさん?つかぬ事をお伺いしますが···どちらへ?』
一定の距離を保つために顔を引きながら尋ねれば、クロさんはニシシ···と黒い笑いを浮かべた。
黒「どこって、オレ達これからどこに行くと思う?」
どこ···って、音駒高校があるのは。
『東京、ですかね?』
黒「ピンポ~ン、正解です」
『え?ちょっと待って下さい···行先は東京って、私は?!』
黒「ん?だから東京。いやぁ、いい拾い物したなぁ、ウンウン···さて、お宅の主将達にお別れの挨拶回りでもしとこうか?」
ウンウン···じゃないってば!!
『お、下ろして下さい』
黒「ム~リ~!だって拾ったのオレだもん。ほ~ら、クルクル~」
『わっ!ちょっ、回らないで!!』
まるで子供と遊ぶかのようにクロさんが私を抱えたまま、その場でゆっくり回る。
グルグルと回る視界の片隅に烏野のジャージを見つけ、思わず大きな声で呼んだ。
『スガさん!!お願い助けて!』
黒「あ、そういう作戦に出た??いいの?澤村君じゃなくて?」