第31章 ステップアップへのチャンス
タイムアウトが終わり、試合が再開される。
それでもやっぱり音駒が優勢で、烏野は追い付こうと必死に食らいついていく。
音駒のサーブを澤村先輩が拾い、影山と日向君のコンビネーション···も、まだ思うように狙い通りには行かず夜久さんに呆気なくレシーブされる。
またダメかぁ···
悪気はないけど、こうも連続であの7番に止められて夜久さんに拾われると、ちょっとガックリ来てしまう。
夜久さんがレシーブしたボールは大きな弧を描いて研磨さんへと繋がれる。
クロさんも上がって来てる···でもあの7番も···
研磨さんは誰にトス上げる?!
オープン使うなら、あの7番?!
すると研磨さんは、私の予想とは違い自分でそのボールをネットのこっち側に押し込んだ。
ー ピッ! ー
武「あぁっ、また!···忘れた頃にやってくるツーアタック···」
ツーアタック···そうだった、よね。
研磨さんはそれを使ってくるのを忘れてた。
警戒すべきはスパイカーだけじゃない。
研磨さんだって、周りをよく見て判断して自分で処理をして来る人だった···
ダメだなぁ、私···まだまだ甘いじゃん···
こんなんじゃ桜太にぃにため息つかれちゃう。
それよりもイヤなのは、慧太にぃにネタにされて···からかわれる事なんだけど。
小さく息をつき、気を取り直して記録を付け続ける。
コートの中のメンバーは、まだギラギラとしていて気合いは充分だ。
点差的にはかなり開いてはいるけど、まだ負けが決まったわけじゃない。
烏野はきっと、まだこれから。
疲れもとっくにピークを超えてるはずなのに、あれだけのギラ付きを見せてるんだもん。
まだ、頑張れる!
繋心が言ったように、力ずくで!とか言うつもりはないけど。
ひとつでも多く、少しでも多く···経験は詰める方が先へと繋がるから。
どこまでも走り続けるみんなに、着いて行くと決めたのは私。
だから、そんな思いを込めて···
『まだ負けてない!ここから取り返せるよ!!』
ひときわ大きく声を張り上げ、エールを送った。