第31章 ステップアップへのチャンス
夜「クロ···お前いい加減にしとけ?主将のお前が抜けたら、こっちは困るっての」
黒「お?噂をすれば、だな」
『だから!···はぁ、もういいです』
反論すればするほど、追い込まれる気がする。
慧「じゃ、潔子ちゃんに氷も渡した事だし。面白ぇモンも見れたし?帰るとすっかな」
そうだった···こっちを忘れてた。
『桜太にぃは当直明けだから分かるけど、慧太にぃも帰るの?』
慧「お?なになに?オレ達が帰ったら寂しいってか?」
『いいえ···どうぞお帰りください』
ニヤニヤしながら言う慧太にぃの背中をグイッと押して、数歩進む。
これ以上、クロさんに慧太にぃにって思うとそれだけでグッタリしてしまいそうだから。
···どうせ慧太にぃは家に帰ったら帰ったで、からかって来るんだろうし。
繋「お!そうだ、桜太に慧太。お前らの事を話したら、ウチのジジイが今度顔見せに来いってよ。···紡もな」
桜「分かった、近いうちに必ず行くよ」
慧「監督爺さんと桜太で紡の争奪戦だな。って言っても、紡は速攻アッチ行くだろうけど?」
また慧太にぃは怒られるような事を言うんだから。
繋「ちげーねぇ」
···繋心もだけど。
桜「2人共、当直明けの俺の話···聞く?」
慧・繋「「 謹んで辞退させて頂きます! 」」
そうそう、当直明けの桜太にぃは···それはそれは静かに淡々と長いお説教で怖いんだから。
かつて1度だけ受けた事のあるその時間を思い出し、背筋が凍る。
まぁ、あの時は完全に私が悪かったから怒られても仕方ないんだけど。
とにかく···怖かった。
桜「じゃ、紡?」
『ひゃいっ?!』
急に名前を呼ばれて、驚きのあまりおかしな返事をしてしまう。
桜「そんなにビクビクしなくても···とりあえず、俺は1回帰るね?さすがに今日はヤバいから。本当は最後まで居たいけど、昨夜はちょっと忙しくて精神的にやられてるんだ···立花先生に、ね」
立花先生って名前を聞いて、あぁ···なるほど···と妙に納得してしまう。
昨夜の当直は、あの面白い愉快な先生と一緒だったんだ?
私的にはあの整形外科の先生は楽しいけど、桜太にぃは割りと構われて振り回されてるみたいだから。
そんな桜太にぃ達を見送りながら、最後のセットになるゲームに向けて気持ちを整えた。