第31章 ステップアップへのチャンス
影「おい!ボケっとしてんじゃねぇ!」
『痛っ!···ちょっと影山!なんの前触れもないデコピンやめてよ!』
目の前に影が落ちたと思ったら、いきなりデコピンとか酷くない?!
影「うるせぇ!1セット終わったのにアホ面晒してるからだ」
嘘でしょ?!
ビックリして周りを見れば、清水先輩や菅原先輩がみんなにスクイズを手渡している。
やば···今の一瞬で?!
『わっ!わわわっ!!』
慌てて椅子から立ち上がるも、慌て過ぎて椅子に足を引っ掛けて前のめりになってしまう。
ちょっ···転ぶ!!
武「危ない!···っとと、大丈夫ですか?まずは落ち着きましょう、城戸さん」
もう少しで床とご対面···となる直前で、武田先生に腕を引かれて事なきを得た。
『すみません···』
武「あなたは本当に、目が離せない人ですね。危なっかしいというか」
にこりと笑いながら言われると、口調さえ違えど、何だか桜太にぃに言われてるような気がして小さくなってしまう。
武「ちょっと目を離すと危なっかしくて、でもきっと、そんな所がみんなの心を擽るんでしょう。つい、構いたくなるというか。ね、澤村君?」
澤「先生···なぜそこで俺に振るんですか···」
『大地さん?』
澤「ち、違うから!絶対···いや、多分!」
ニコニコとする武田先生と、なぜかぎこちなく動く澤村先輩を見比べて首を傾げた。
月「···構いたくて仕方ないのは、アチラさんもデショ···ほら来た」
タオルを顔に当てながら月島君が言えば、音駒チームの方向からクロさんが歩いて来た。
黒「お嬢ちゃん、試合中に誰に熱い視線を送ってたのかな?」
『···言ってる意味が分かりません。それから、そんな風にしなくても私はちゃんと会話出来ますから』
ニヤニヤしながら私の前に小さく屈むクロさんに言うと、それはそれでニヤリと笑って返される。
黒「ウチのリベロ···やっくんが、そんなに気になっちゃった?」
『な···なに言ってるんですか?!』
黒「またまたぁ~?穴が開きそうなほどやっくんに熱い視線を向けてたの、オレ知ってるんだけど?···もしかして···惚れちゃった?」
「「 はぁ~っ?! 」」
私が驚きの声を上げる前に、烏野ギャラリーが叫び声を上げた。
黒「やっくん、カッコイイもんなぁ~?」