第31章 ステップアップへのチャンス
『お···女の子は小さい方がいいんだよって言われたもん!』
影山の言葉に言い返すも、なんかちょっと虚しくなる。
なんで家族で私だけ···こんなに小柄なんだろう。
みんな、背が高くていいなぁ···なんて見回せば、ふと縁下先輩と目が合ってしまい、苦笑を返され慌てて目を逸らした。
縁「あの、大地さん?お取り込み中すみませんけど···」
通りすがりに私の肩をポンっと叩いて、縁下先輩が隣に立ち、話の輪に入って来る。
縁「城戸さんはトス上げるだけですよね?だったら、今くらいサポーターいらないんじゃないですか?ほら、スガさんだってしてないし。いつもの練習の時だって、不意に大地さんが頼む時は···城戸さんはサポーターしてなかったと思いますけど?」
縁下先輩···私にはいま、縁下先輩に後光が見えます···
澤「え?あ、あぁ···そ、そう、だったかな?」
意外と縁下先輩って、周りをよく見てるっていうか···そんな発言に澤村先輩がしどろもどろになるなんて珍しい。
縁「それに時間に限りがあるんですよね?特に今日は。だったら、俺達が早く終わらせて音駒にバトンタッチしないと···じゃないんですか?」
菅「はい、大地の負け」
···ってことは?
はぁ···と大きくため息をついてから澤村先輩が私を見る。
澤「まったく···縁下を味方に付けるとか、これはうかうかしていられないな」
『じゃあ?!』
澤「絶対ケガしない事。前みたいな大きな事になったら俺が桜太さんに怒られるからね。そこんとこよーく分かってくれるなら、コートに入ってもい、」
『よーく理解します!』
夜「食い付き早っ!」
『縁下先輩!ありがとうございます!!』
縁「わっ···良かったね城戸さん?」
つい、いつもの感じで縁下先輩にギュッと抱き着くと、一瞬驚きながらも笑ってくれた。
『城戸 紡、渾身のトスを上げます!損はさせませんっ!』
澤「いや、普通のでいいからね···」
『そうと決まれば···ボール取りに行ってきます!』
やや呆れ顔で笑いを零す澤村先輩に笑顔を返しながら、コートの中に転がるボールを取りに駆け出した。