第31章 ステップアップへのチャンス
~ 菅原side ~
「ちょっと大地、アレ見てよ」
離れた部屋の隅で紡ちゃんが音駒のセッターの世話をやいてるのを見て、大地に声をかける。
澤「ん?···あれは、どういう?」
オレに言われて、大地も目を丸くした。
「だよね!なんで紡ちゃんがあんな事してんだろ」
さっきまでの練習試合で、あのセッターがケガをした···なんて話は聞いていない。
むしろ手元を見れば、一心不乱にスマホでゲームしちゃってるし!
「大地どうする?紡ちゃん呼び寄せる?」
澤「そうだなぁ···でも、何かワケがあるかも知れないし···」
大地がそう言うと、オレ達の前にスっと人影が過ぎった。
黒「すみませんねぇ、ウチのセッターが “ いろいろ ” お嬢ちゃんにお世話になっちゃって」
なんだ?···コイツ、妙な含みを持たせて来やがった。
澤「いえいえ大丈夫です。あれは “ ウチの ” マネージャーが判断してやってる事でしょうから」
うわ···大地も負けてない?!
黒「あ、そう来た?···んじゃ、 “ あのまま
”仲良くしちゃってていいワケ、ね?」
ニッと笑う顔が、あからさま過ぎて···なんかちょっと腹立つな。
澤「えぇ、構いませんよ?紡は “ 誰にだって ” いつもあんな感じですから。俺達にしてみれば、日常の光景です」
ニコニコと穏やかに笑顔を見せながら言ってるけど、大地···お前、目が笑ってないからな!
傍から見ればお互い主将同士が微妙なオーラを発してる、きっとこれは真剣勝負の練習試合だからだ!
···とかいう風に見えるんだろうけど。
違う···違うぞ!
絶対そういうのじゃないぞコレは!!
旭「スガ?怖い顔してどうした?」
「旭···いまこっち来るな。ガラスハートのお前は、多分···きっと耐えられずに木っ端微塵だ」
ほらほらアッチ行ってろよ!と旭の背中を肘で突いて押しやって、出来るだけ被害者が出ないように包囲する。
いま旭の心が折れたら、試合始まっても立ち直ってなさそうだからな。
澤「とりあえず聞くけど、お宅のセッターは···なぜあんな状況に?」
黒「さぁ?人見知りの研磨があれだけ懐くんだから、ナニがあってもおかしくはないけどな?」
チリチリと火種の飛ばし合いをする2人を横に、オレはまた···紡ちゃんの様子を伺った。